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5.2.2 N2O排出対策

N2OはNの酸化が不完全な状態であるから、理論上は酸化を進めることでN2Oの排出削減することが可能である。ただし、その場合はNOxの排出量が多くなり、別の意味で環境には好ましくないことになる。例えば、着火遅れを短くすることによって燃焼状態を良好にした場合、Pmaxも高くなってN2Oは削減すると考えられるが、結果として初期燃焼雰囲気下においてThermal NOx(NO)濃度の増加を招く可能性がある。また、燃料中のN分が酸化される過程は複雑であり、部分的に酸化過程を制御することも困難と考えられる。今回実施した調査でも(2章参照)、2サイクル機関では燃焼状態の良好な部分でN2Oの発生の増加が見られている。

自動車用機関での対策をみても、燃費の改善とともに走行距離当たりのN2O排出係数の改善を期待しているが、N2O排出濃度そのものの具体的な改善策は示されていない。なお、3元触媒使用のガソリン機関においては触媒劣化時にN2O排出濃度が高くなることも報告されている。

 

一方、NOx軽減を目的とする排ガス脱硝装置は充分な脱硝反応時間をかけることによってN2Oも分解することが、陸上固定機関などの実験や船舶技術研究所の予備実験23などでも明らかになっている。排ガス脱硝技術については、アンモニアまたは尿素を用いた選択接触還元法(SCR法)が技術的に最も確立されており、有効性も確認されているが、船舶への適用には課題も多く、排ガス温度が低い出港時には触媒が有効に働かない等の問題がある。

このため、低温時にはマンガン‐ジルコニウム複合酸化物(Mn2O3・2ZrO2)やバリウム‐銅化合物(BaCuO)等の吸着剤にNOxを吸着させ、一定温度以上になってからNOxを分解するシステムの研究をシップ・アンド・オーシャン財団では実施している。これは主に出入港の多い内航船を対象に小型システムの開発を目標に行っているものである。このような研究開発や設置スペース上制約のある船舶に搭載可能な省スペース型の脱硝装置の開発により船舶にも適用可能な脱硝装置の開発を推進し、船舶からのNOx、N2Oの排出をともに削減することが可能であると考えられる。

 

23 船舶技術研究所(1998)、平成10 年春季船舶技術研究所研究発表会より舶用ディーゼル機関における脱硝装置の適合性について(第一報)

 

 

 

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