日本財団 図書館


(7) ディーゼル機関の燃費の改善

船舶用ディーゼル機関の燃費改善のための技術開発の成果には目ざましいものがあった。

最近においても、静圧過給及び過給機の性能向上、燃料噴射率の改善、ロングストローク化等の結果、従来から中・大型船の主機関の主流をなしてきた大型低速2サイクルディーゼル機関では、約20年間でその燃料消費率は150g/PSh台から120g/PSh台へと約20%も改善されている。

近年は技術の動向は低質燃料への対応と、メンテナンスコストの低減、そして低NOx技術へと重心が移りつつある。そのため、熱効率の向上は近年横ばいの状況にある。

噴射の電子制御について、各メーカーとも積極的に取り組んでいる。噴射時期、噴射量などの噴射プロファイルを、気筒ごと、負荷ごとにあるいはサイクル内で変更可能になるため、燃焼を全体に均一にする事が可能であり、得られたマージンを進角に回す事によって、NOxの排出量を増やすことなく熱効率の改善が期待できる。

また、ユニット全体としての熱エネルギーの回収による船舶プラント全体のエネルギー有効利用の可能性は大きく、その検討が今後の重要課題と考えられる。燃料油のもつ熱エネルギーのうち動力化されるのは45%前後であり、残りは一部船内の熱源あるいは船内電力用の発電動力源として使用されている他は、海中及び大気中に捨てられている。これらの排熱をできるだけ有効に回収し利用することが重要である。特に最近は、コンテナ船や冷凍冷蔵船など航海中に推進以外に大きなエネルギーを必要とする船舶が多くなっている。現在でも軸発や排気エコノマイザーなどの技術が用いられているが、更なる排ガス排熱回収率の増大、低沸点熱回収媒体の研究、排ガス排熱を直接の熱源として利用する吸収式冷凍冷蔵システムの導入などの検討が今後必要であるものと思われる。

 

(8) 代替燃料

重油以外の低公害あるいは低CO2排出燃料として、LNG、メタノール、水素などの代替燃料がある。これら、ディーゼル機関に対する代替燃料については、陸上でも開発実用化が進んでおり、大型のガスエンジンについても発電用などで充分な実績がある。また、特にLNGについては、LNG船のボイルオフガスの利用のため、ガスエンジンの検討も行われてきた。800mmφ×2,300mmの舶用エンジンも開発されており、技術的要素としては実用化に充分近いと言える。メタノールについても陸上発電機関を応用し重油をパイロット噴射する機関が開発されている。これらについては、同程度の軸出力を得る場合のCO2排出量が10〜20%程度減少するとしている試算もある。

また、水素については大型ガスエンジンの開発例は少ないが、自動車用エンジンの技術開発が進んでいる事、機関からのCO2排出率がほぼゼロであること(水素生成の段階で発生する可能性がある)から開発が望まれる。

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION