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旧運輸省運輸政策審議会が1997年にまとめた「運輸部門における地球温暖化問題への対応方策」でも内航海運の省エネルギー対策として前項の「船型の見直し」とあわせて、「船体重量の軽減による省エネ化を進めるとともに、船舶の大型化を図り、単位当たりの燃料消費量を削減」することが記載されている。

日本国において建造される船舶では溶接技術や材料の限界まで軽量・薄肉化が進んでおり、現状の設計では各構造部材の座屈防止条件が制限要因となっている。このため、さらなる高張力鋼の開発などがなければ現状より大幅な軽量化は困難と考えられる。残された軽量化として上部構造や甲板ハッチ部へのアルミ部材の適用などが考えられるが、外航の大型貨物商船では、その効果は数%程度であること、現行法規上軽量部材の使用に一部制限があることなどから、汎用性は小さいと考えられる。

なお、ダブルハルタンカーのように本来の貨物輸送と関係のない鋼材やパネルを使用することは、船殻重量の増加に繋がり輸送エネルギー効率としては不利となる。ただし、ダブルハル規制が世界全体の燃料消費量に与える影響はごく少なく、むしろ新船への代替による燃費向上により、全体の輸送エネルギー効率は改善すると考えられる。

 

(5) プロペラ効率化

船舶の推進システムには、古くからプロペラによってトルクを推力に変換する手法が用いられてきた。当面はプロペラ推進の使用は続くものと考えられる。ここではプロペラなどに関する新技術について集約した。

 

1] プロペラの大口径化

船舶のプロペラ推進性能を改善する方法として過去に最も省エネルギー効果もたらしたものは低回転大口径プロペラである。低回転化によって生じたキャビテーション限界への余裕を大口径へ回すことによって推進効率を向上させるものである。機関の低速化による熱効率の向上、減速機を使用しないことによる信頼性と機械効率の向上も同時にもたらす。現在ではプロペラレーシング(プロペラが水面上に出て空回りすること)が起きない範囲内で大口径化が講じられていてる。

プロペラの大口径化に伴う技術として、大口径プロペラを収納でき、かつこれに伴う抵抗増加や船体効率の低下を抑えた船尾形状の研究(球状切り開け船尾など)、ハイスキュープロペラによるキャビテーション防止・起振力の軽減など、プロペラ推進に付随する現象に対しての対策技術も進んでおり、ほぼ完成段階にあると考えられる。

 

 

 

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