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5.1.3 輸送エネルギー効率向上技術とその可能性

CO2削減対策は、輸送全体に係る燃料消費量の削減つまり輸送エネルギー効率(トンマイル当たりの燃焼消費量)の改善に他ならない。船舶における輸送エネルギー効率改善のための対策は、船舶の運航経済性を向上させるものとして積極的に推進されてきた課題であり、特に1970年代のオイルショック時に大きな進歩を見せた。輸送エネルギー効率の改善は、主に下記の3つの方向で進められてきた。

(a) 船の大型化と減速航行による輸送エネルギー効率の改善

(b) 船型の改善を含む船の推進性能の改善

(c) 主機関の燃料消費率の改善

 

将来において更なる輸送エネルギー効率の改善の可能性として(a)〜(c)を見た場合、(a)についてはオイルショック後は比較的石油価格が安定しており、また世界的な景気低迷により輸送需要の伸びは比較的緩やかになると考えられるので、オイルショック前後のような大型化や減速航行による輸送エネルギー効率の改善は期待しにくい。従って、本章においては(b)船の推進性能の改善と(c)主機関の燃料消費率の改善による省エネルギー対策を中心に、各要素技術ごとにその将来性について造船メーカーなどへの聞き取り調査及び文献調査により定性的な評価を行った。

輸送エネルギー効率向上に対して有効と考えられる技術について評価した結果を表5.1-4及び表5.1-5にとりまとめた。短期的、中長期的技術の区分は、COPの目標設定年である2008〜2012年において、広範な範囲で実船に対して適用可能であるかを基準とした。

 

(1) 船型の最適化

船の推進性能の改善には、造波抵抗及び粘性抵抗の減少を図る必要がある。造波抵抗は高速船で大きな問題となるもので、水面下の船体の寸法及び形状に関係し、主に船首と船尾部分で発生する波に推進エネルギーを奪われることによって生じる抵抗である。粘性抵抗は水面下表面積とその粗度に比例する摩擦抵抗のほか形状に影響され肥大船では抵抗の大部分を占める。

以前から、船首部にはバルバスバウ(球状船首)を採用したり、船尾についても船尾バルブなどを設けて、伴流を増大させ、プロペラ部分への流入速度をできるだけ遅くさせることで不均一流を発生させない形状を取るなどの改善がなされてきた。

また従来は、方形肥せき係数(Cb値;Block Coefficient)やL/B値など船型の主要目については、経験的に蓄積されたデータベースから大きさや速力などの要求スペックに類似の船型を母船型として選定し、その性能データと性能計算ツールを利用して、あるいは水槽試験を繰り返して設計されてきた。

最近は、CFD(Computational Fluid Dynamics)に基づいて、上記主要目や船首尾の形状を含めて、造波抵抗あるいは粘性抵抗を最小とする最適形状を設計する手法が多く取られている。例えば999総トンの内航貨物船の場合、一定の載貨重量トン数と船速を保ちつつ、船体形状を在来船よりもやせ型にして造波抵抗を少なくするとともに、後述の低回転大口径プロペラを採用することにより燃料消費量を10%程度低減すると言った船型開発が進められている。

 

 

 

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