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4 外航船舶の運航に伴うCO2排出量の将来予測

 

本章では船舶運航に伴って排出される温室効果ガスの大半を占めるCO2排出量について、何らかの対策を講じなかった場合の将来予測を行う。CO2排出量の将来予測を行うためには将来の荷動き量つまり輸送総量と、それを運ぶ全船腹量つまり輸送総量の予測が必要であるから、4.1において各船種ごとの輸送総量ならび輸送容量の将来予測を行い、4.2において両者の予測に基づいた年間燃料消費量及びCO2排出量の予測を行った。

 

4.1 輸送総量ならびに輸送容量の将来予測

種々の経年的なトレンドから、将来の燃料消費量を算出することは、予測においてよく用いられる手法である。例えば、世界(あるいはOECD国)の過去の経済成長率と、1.4.2で示した統計値から求められた燃料消費量の年増加率との相関をとり、別途予測されている将来の経済成長率をあてはめて、将来の燃料消費量(P)を計算することも可能である。ちなみに、1990年〜2000年でみると、OECD諸国のGDPは約3%/年でほぼ直線的に増加しており、一方船舶の燃料消費量(P)は約5%/年でやはり増加している。

しかしながら、1.2.4に示したように、その輸送エネルギー効率(RTijk)に最も影響する燃料消費率(Cijk)は船種、船型、船齢カテゴリーによって大きく異なる。つまり、輸送総量が同じであっても、船種、船型、船齢の偏在などの要素があれば、燃料消費量は影響を受ける事になる。

同様に、近年のバルカーの専用船化や、コンテナ輸送比率の増大など輸送形態の変化を考えると、航路ごとに貨物量(TN)の年増加量は異なる可能性が高い。つまり、世界規模で貨物量全体に一律の増加率を当てはめることには無理があると考えられる。

従って、前述のように単純に経済成長率を使った推定では船舶の代替の効果などを定量的に解析することができない。すなわち、燃料消費量の将来予測には、少なくとも船種毎の輸送総量(TRi)の将来予測と、船種、船型、船齢ごとの輸送容量(TCijk)の将来予測が不可欠であると考えられる。

ここで、輸送総量(TRi)と輸送容量(TCijk)の定義を再掲する。

 

TRj:輸送総量;船種iに属する船舶が輸送した年間輸送総量。単位はタンカー・バルカーではDWT/年、コンテナ船ではTEU/年。

TCijk:船種i、船型j、船齢kに属する船舶の輸送容量。単位はタンカー・バルカーではDWT、コンテナ船ではTEU。

 

本調査では船種をタンカー、バルカー及びコンテナ船の3カテゴリーに分け、ウェットバルクはタンカーが、全てのドライバルクはバルカーが、コンテナ貨物はコンテナ船が、おのおの輸送するものとした。以下、4.1.1ではタンカー及びバルカーの輸送総量(TRi)及び輸送容量(TCijk)の将来予測を、4.1.2ではコンテナ船の輸送総量(TR)及び輸送容量(TCjk)の将来予測を行った。

なお、船種毎の輸送総量及び輸送容量の予測の際には、造船業基盤整備事業協会13資料(以下、基盤協(2000)14と略)を参考にした。

 

13 同協会は2001年4月から運輸施設整備事業団に統合された

14 造船業基盤整備事業協会(2000)「EU 提案に基づきダブルハル化を実施した時の船腹需給量等に関する調査」

 

 

 

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