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3 外航船舶の運航に伴う各温室効果ガスの排出量推定

 

1で検討したCO2排出量と2で検討したCO2以外の温室効果ガス3物質の排出量の結果を表3-1に集約した。今回3物質排出量の試算を行ったが、必ずしも充分な精度のあるものではなく、仮定や推測に基づく数値となってしまった。これは、実測のサンプル数が、陸上測定を含めて充分であるとは言えないため、燃料種や機関形式(2サイクル、4サイクルの差異)の影響が定性的にも明らかになっていないこと、また計算の基礎数値となる統計値も陸上発生源に比較して整備されていないことによる。

今回の試算によると、CO2以外の3物質温室効果ガスの排出量及び漏洩量は、外航船舶の運航に伴う温室効果ガス排出総量の4%程度(CO2換算)になるものと考えられた。3物質の中では。冷蔵・冷凍コンテナから漏洩によるHFCs寄与割合はが多く、1〜2%程度を占めていると推定された。特に、冷蔵・冷凍コンテナの総量の増加割合はコンテナ全体の増加割合を上回っていることから、HFCsの排出量割合は今後増大する可能性も予想される。

また2章の冒頭にも述べたように、CH4及びHFCsの排出量については、これを海運に伴う排出としてカウントするのか、あるいは荷役作業が行われた港湾の排出としてカウントするのか、荷主の所属する国の排出としてカウントとするのかといった、いわゆるアロケートの問題がある。今後はCOPの場において、これら境界領域で発生する排出量のカウントについて議論をして行く必要があると考えられた。

 

参考として、日本国の国内排出総量及び国内分のうち運輸部門の温室効果ガス排出総量に占める各物質の割合及び割合を表下欄に示し、3者を比較した。

CH4は、運輸部門の割合より大きく国内排出総量の割合より小さい。これは運輸全体では、運航に伴う排出を考慮せず機関からの排出のみをカウントしていること、また陸上発生の分野では農業など非燃焼系の排出を見込んでいることが主たる原因である。

N2Oは、運輸部門の割合、国内排出総量の割合よりともに小さい。これは運輸全体では、航空機及びガソリン機関の排出係数が大きいこと、また陸上発生では工業プロセスなど非燃焼系の排出を見込んでいることによる影響が大きいと考えられる。

HFCsは、運輸部門の排出割合は船舶の排出割合とほぼ同等であるが、国内排出総量との比較では1/3倍程度の割合しかない。これは、陸上発生源にはSF6及びPFCsの値も合算されているためである。HFCsに限っていえば、陸上施設では近年漏洩対策が充分進んでおり、その使用量は海上での使用に比較して削減が進んでいると予想される。

 

外航船舶の運航に伴う温室効果ガス排出削減を検討する場合、その主体をなすCO2に着目することは必然であるが、CO2以外の3物質についても適切な削減対策を講ずることにより、外航船舶の運航に伴う温室効果ガス排出総量の数%程度は削減できる可能性があり、CO2以外の温室効果ガスの削減方策検討も重要な課題であると考えられる。

 

 

 

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