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(3) 軽油および軽油−廃食用油混合燃料について

廃食用油を燃料としたエンジンにおいて、従来燃料である軽油、重油も使用できれば、廃食用油の需給に応じて柔軟に対応することができる。そこで、遮熱エンジンにおいて軽油のみならびに軽油−廃食用油の混合燃料を使用した場合における燃焼観察を行った。

軽油のみおよび軽油−廃食用油混合燃料を使用した場合における燃焼経過をそれぞれ図5・26、図5・27に示す。軽油、混合燃料の燃焼経過は、図5・ に示す廃食用油の燃焼経過と同様となっている。すなわち、3燃料とも以下のような燃焼経過となっている。副室では噴射開始後約0.3ms後に噴霧の根元付近で着火し、噴霧の発達にともなって、噴霧の先端に向かって火炎が発達する。燃焼噴霧が連絡口に到達すると火炎は主室に噴出する。この最初に噴出した火炎は主室の空気と混合して再燃焼し、火炎は一時的に薄くなる。このとき、主室における燃焼に伴って、主室の燃焼ガスが逆流し、副室の燃焼ガスが副室奥に押し戻される現象が観察される。そして、燃焼ガスが再び噴出する。このとき、燃焼ガスがピストン底面に接触することによって冷却されるため、濃い褐色のすすが生成され、その後副室から噴出する燃焼ガスによる撹乱によってすすは再燃焼し、褐色の部分は少なくなる。主室の火炎は燃焼後期まで存在し、その動きも緩慢となっている。

以上のような結果となっていることから、廃食用油を燃料とした遮熱エンジンに従来燃料である軽油あるいは軽油と廃食用油との混合燃料を使用しても燃焼上の問題はなく、軽油のみの運転から廃食用油のみの運転まで利用できる。すなわち、多種燃料エンジンとしての可能性を十分持つ。

 

5・5・5 まとめ

急速圧縮膨張装置を使用して、単気筒エンジンの運転条件と同じ条件における廃食用油の燃焼観察を実施した。その結果をまとめると以下のようになる。

(1) 急速圧縮膨張装置を使用して廃食用油を燃料にした遮熱エンジンの燃焼経過の高速度写真撮影に成功した。

(2) 高熱効率、低スモークを実現するには、以下のような燃焼を実現することが必要である。

a. 燃料(混合気または燃焼ガス)の早期の主室への噴出

b. 副室での燃焼の燃焼後期までの継続による主室での強い噴流の生成

c. 副室から噴出する燃焼ガスの噴流による主室燃焼の促進

(3) 単気筒エンジンの試験結果と燃焼観察の結果から、燃焼のコンセプトの妥当性を明らかにし、燃焼改善の指針を得ることができた。

 

 

 

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