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船体沈下現象の結論及び同現象の本件における関与

本件における船体沈下現象の調査結果及びQE2の損傷の分析結果として、安全委員会は、船体沈下が本件発生原因の一因であると結論した。NOAAが報告した岩場の実測深度と、AUSS/キューナード社が報告した同岩場の深度とが比較された。これらの実測値は、QE2の船体沈下を推定するのに使用された。安全委員会は、動水力学の理論を使って求めた独自の船体沈下の推定値、NOAAの地形学的調査資料及び船体損傷の写真鑑定を通じてQE2の船底下水深の劇的減少(船体沈下)は、高速力で発生することを突き止めた。その上、この所見は、デビッド・テイラー中央研究所で行った別個の分析結果によっても確認されたのである。安全委員会は、船体沈下の情報が、通常、船内に表示されていないことや乗組員の船体沈下についての知識が少ないこと、あるいは、その知識を拡めることの必要性を認識し、船体沈下及び操縦性能資料の船内表示を勧告した現行のIMO決議を実際に行う方法について討議している。

 

1992年NOAAによる調査とAUSSによる調査との差異…AUSSは、2個の岩石に衝突したとするNOAAの1992年の調査結果と違って、6個の岩石に衝突痕があると報告した。AUSSの船底損傷の調査を基にして、安全委員会は、QE2が乗揚地点において、2個以上の岩石と衝突したと確信している。

NOAAの調査に並行して、潜水夫達は、本船の進路線に沿った、付近海底の調査を行い、RR IとIIは、ほぼ進路線上に横たわっているのを確認した。もし、岩石だけとの衝突であったなら、船底に生じた損傷は、その岩石の寸法や接近度合から、船横方向では20フィート以内の範囲で発生していることになる。しかし、損傷部調査あるいは損傷部写真では、外板の損傷は、右舷では前方は船首部から後部まで、左舷では幅がビルジ・キールまで達し、船体前部から後部まで伸びる、相当に幅広な平行線状に生じているのが分かるのである。RR IとIIは、105フィートの船幅に比べれば狭い範囲(約8フィート)に横たわっているのが観測されていて、広範囲にわたる船横方向の損傷を与えることは考えられないのである。NOAAの潜水夫による水面下の調査では、視程が制限され、船体の船幅の三分の一程度しか見通せなかったことを考慮すべきである。一方、AUSSの調査は、NOAAの調査の後に、それよりも長い時問をかけて実施されたのである。

 

 

 

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