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乗揚の結果として、長さ963フィートの船体のうち400フィートが損傷を受け、7個の二重底タンクに破口が生じていた。しかし、二重底構造のために本船は、沈没の危険もなかったし、修繕のため自力で目的港まで航行することができたのである。

本件の分析に当たって、安全委員会は、QE2の乗揚に関わりがあったと思われる幾つかの安全性の問題点に思い至った。本船の船長と水先人との間の発航前の打合せを含む船長/水先人の協力関係、ヴィンヤード海峡出航中の両者の意志疎通の方法、両者間または両者と船橋当直との間の協力行動などが調査された。

針路とか速力を考慮に入れての進路の選択、針路に関して水先人と船長が判断したことの効果、それと出航航路についての船長、水先人の考え方も同様に分析された。加えて、安全委員会は、船底下間隙を減少させることとなった船体沈下の水力学的現象が、本件乗揚に関与し、損傷の重大化に関わったのか、また、船長あるいは水先人が高速力で航行中での船体沈下が増加することを知っていたのかの点について調査した。

その他の分析された安全性の問題点は、航海用海図や情報の正確さ、または、合衆国外の船主、船長に向けたコースト・ガードからの合衆国水域で発生した事件に関連して行う毒物検査に関わる通達の正確さ、そして、身体に障害のある旅客に対して退船を伝達する方法の的確さなどであった。

 

本件海難

QE2がオーク・ブラッフズの錨地を発航し、水先人が操船の指揮を与えられた後、船長は、水先人が出航進路線は入航時とは違ったものとなると説明しなかったので、出航には入航進路を逆にした進路線を進むものと考えていた。水先人は、“出航進路は、見れば分かるので説明するまでもなかった。即ち、初めは入航進路線を...逆に進む予定であった。”と証言している。錨地と“NA”灯浮標との間の地形では、進路は限定され、選択の余地のないものである。QE2のナビゲーターは、船長の指示に従って浅海域を避ける進路線を使用海図に記入した。しかし、ナビゲーターと水先人の間に出航進路についての打合せが、全くなかったのである。

水先人は、本船のナビゲーターが設定した、実際の進路線についての説明がなかったけれども、水先人が良く知っている物標(灯浮標や地形)と針路を使って水先案内をするように任されたと証言している。

 

 

 

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