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分析

 

総論

安全委員会は、通常のとおり本件について、次の要素を排除した。天候条件、他船の航行模様、QE2の構造的条件、船橋当直者の資格問題、それに船橋当直者の身体問題である。

本件発生時の天候は、晴朗で、視程10ないし15海里で、水路は微風が吹き波もなかった。QE2がウッズ・ホール付近を通過したあとで、ヴィンヤード海峡西行中、他の船舶とは行き会っていない。事件発生の前後を通じ、コース・レコーダーを除いた主機、操舵機、航海計器のどれにも、欠陥はなく正常に作動していた。

安全委員会は、水先人、船長、船橋当直中の乗組員の訓練、経歴、免状の不適格性についての検査を行い、総てが連邦政府あるいは他国の現行規定の求めるところに合致しているものであると認定した。QE2船長、水先人、船橋当直者は、業務遂行に適格であり、各自がそれぞれの業務を遂行するのを妨げる肉体的、精神的な問題もないことは明瞭であった。船長、水先人、船橋当直者は、全員、事件前数日間の就労/休息時間体制は、平常通りであったと証言している。特に、船長、一等航海士、水先人は、事件発生前24時間内に取った休息は、通常と同じであり十分なものであったと報告している。そして、安全委員会は、睡眠不足による身体的弊害があったと証明する証拠を見つけ出していない。これに加えて、初めの段階で船長、水先人、一等航海士から採取した薬害検査の試料及びその後に採取した二等航海士、操舵員、当直中の甲板手の試料からは、いずれも薬物を検出していない。しかし、薬害検査の試料は、水先人及びQE2の船橋当直中の航海士達の誰からも、最善の時期に採取が行われていないのである。船長、水先人、一等航海士の採尿は、事件の16時間後であった。二等航海士、操舵員、甲板手からの採血は、事件の39時間後であった。安全委員会は、試料の採取は事件発生後、遅くとも4時間以内に済ませるよう指導してきていた。

乗揚は、水深がNOAA版海図及び英版海図で39フィートと記されている、ヴィンヤード海峡海域で発生した。QE2が、オーク・ブラッフズの錨地を発航したときの計算による最大喫水は、32フィート4インチであった。ヴィンヤード海峡は、QE2に匹敵する深喫水の船舶が航行する海域ではない。ヴィンヤード海峡に入航した喫水28フィートを超える船舶としては、5年前のQE2が最後のものであった。乗揚後行われたNOAAとキューナード社の調査では、事件発生時における発生地点海域の岩石何個かの水深が、30.6から35.0フィートの範囲であったことが明らかであった。この調査及びRR IとRR IIの2個の岩石から採取された塗料片が、QE2が33.6から35.0フィートの深度でRR Iに、31.6から34.4フィートの深度でRR IIに衝突したことを示している。

 

 

 

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