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この計算では、QE2が乗り揚げた海域に存在する傾斜海底のことは考慮に入れていない。そのかわり、船体沈下現象に与える傾斜海底の影響を推定するために、水深40、45、50それと60フィートでの船体沈下量を計算した。

 

キューナード社による推定船体沈下量…キューナード社は、QE2で発生したと考えられる船体沈下量を推定するのに、AUSSの船体損傷検査とその資料を利用した。同社の分析では、最も可能性のある船体沈下量は、2から3フィート半のところにあり、多分2フィートに近いところであろうと結論した。同社は、左舷ビルジ・キールの損傷がRRIとの接触によるもので、そのときのトリム変化は3フィート半であったと推定した。別の筋書では、キューナード社は、RRIがこのキール部分で8インチの深さまで食い込んだであろうと推定し、また、本船の喫水と岩石の高さを基にし、トリム変化は約2フィートであったと推定した。

 

キューナード社による模型船試験…キューナード社は、イングランドのBMTフリュード・メカニックス株式会社にQE2の模型船による船体沈下量の計測を委託した。この実験では、ほぼ速力14ノットまでは船体沈下現象は船首トリムとなり、速力が増すと船首は上向く一方、船尾は沈下することが判明した。模型船試験では速力16ノットで、船尾が水深41フィートの海底に接触した。速力24ノットで船首は上昇して水深41フィートの岩石には接触しないし、損傷を生じることはない。

 

水路の海底傾斜による影響…QE2の音響測深儀による記録では航行していた水路の海底は、連続的に上向きの傾斜があり、乗揚地点まで時間にして6分聞ばかり、距離にして15,000フィートの航走中に、船底と海底との間隙が約50フィート減少していることを示している。同じ状態の模型海底(注22)で行った船体沈下現象の実験では、模型船は岩棚のような海底が急激に変化する個所では、突然、かつ、瞬間的な船体沈下現象を生じ、結果として乗り揚げることを示したのである。

注22 A.M.ファーガソン、D.B.セレン及びR.C.マックレガー共著、沖合に突き出た砂洲乗揚についての実験的調査。

1982年王立造艦技術研究所発行。

 

船体沈下現象に対応可能な情報…QE2には、船体沈下現象の特性についての情報が用意されていなかった。しかし、操縦性の特性についての情報は、コースト・ガード規則33CFR164.35(g)により、用意されていた。船長及び水先案内人の指針となる船体沈下についての指標を船内に掲示することは、操縦性の特性についての情報を船内に掲示することと極めて密接に関係している。

 

 

 

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