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修正後のコース・レコーダー記録紙上の船首方向と時刻は、使用海図にある実測船位とその時刻から算出したQE2の平均速力を使って、航跡図に一体化して示された。この作業では、潮流と風による影響を無視した。そののち、全体を通して最も見やすい形で表わせるように、本船の使用海図で得られた実測船位、航路の主要地点における変針または乗揚地点を調整して航跡図が作成された。音響測深儀の測深値資料をこの航跡図に示し、この測深値とNOAA版海図の等水深線とをうまく合致させる作業を行った。

安全委員会は、乗揚前22分間(21時36分から21時58分)のQE2の平均速力を24.6ノットと算出した。

本船のナビゲーターは、コース・レコーダーの不具合のことを尋ねられ、ヴィンヤードの錨泊中にコース・レコーダーを点検したと思われると証言している。ナビゲーターは、解明された針路と時刻のずれは、多分、錨泊地で船首が振れ回っている間の“滑り”によって生じたのであろうと証言している。そして、コース・レコーダは、折に触れ修正する必要があるとも証言している。

注17 国際規定では、例えばハリファックスのような中間港からの旅客に対し、安全のための説明会を開催することも、避難訓練を実施することも義務付けられていない。

 

1992年のNOAAによる海底地形調査…乗揚地点の海底地形の詳細図は、NOAAの調査船ルードの指揮官(CO)の証言、音響測深儀の記録それと同船の潜水夫が撮影した海底ビデオを基に作成された。NOAA所属のルードは、ローデ・アイランド島海峡、バッザード湾での海底調査(注18)の指令船であったが、QE2が乗り揚げた海域の調査に回されてきた。1992年8月10日から17日にかけルードは、乗揚地点海域(注19)を調査した。同船は、進路線の両側100メートル以内(200メートル幅で測量が可能。)にある障害物を確認するため、サイド−スキャン高周波測深儀を使用した。また、水深を計測するのに、複式周波電動測深儀を使用した。測深地点の正確な位置決定には、誤差範囲5ないし10メートルに設置されたNOAA地上基地にあるマイクロウエーブ発信機と、これに加えて差動式全地球船位測定機構(DGPS)が使用された。周囲の水深より浅いところが見つかった際には、ルードの潜水夫二人が、その場所の深度を計測するためと可能な範囲で海底の様子を調査するため気圧式測深計を持って海底に向かった。気圧式深度計と電気式音響測深儀の計測値を比較したが、ほとんどわずかな差であった。確定された浅所は、将来のための資料と海図改訂のために利用された。

注18 海底調査は、報告のあった水面下の遭難船体、障害物、あるいはほかの沈下物の存在やその地点を調査し、明らかにするための特別な作業のことである。

 

 

 

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