附属書
海難及び海上インシデントの調査のためのコード
1 序論
1.1 このコードは、国際海事機関の諸条約に基づき、各旗国は、自国船舶に生じた海難について、現行規則に変更を加えることが望ましいかどうかを決定するのに役立つと判断する場合又は当該海難が海洋環境にきわめて有害な影響を及ぼした場合、調査を行う義務を持つということを認識する。このコードは又、海洋法に関する国際連合条約第94条の規定に基づき、旗国は、公海における海難又は海上インシデントに対し、適切な有資格者により、又はその立合により調査を行わなければならないということを考慮する。しかしながら、このコードは又、海難がある国の領海内又は内水で発生した場合、その国は、海洋法に関する国際連合条約第2条に基づき、沿岸国の捜索及び救助の当局を巻き込んだり又は沿岸国にその他の面で影響を与えたりすることを含む人命又は環境に危険を及ぼす海難の原因を調査する権利を有するということを認識する。
1.2 このコードの目標は、海難及び海上インシデントの安全性調査のための共通手法を助長すること、更に、海難に導く与因を明らかにするために各国間の協力を助長することである。この共通手法及び協力の助長の結果は、改善措置を助けること並びに船員・旅客の安全及び海洋環境の保護を促すことになろう。これらの目標を達成するため、このコードは、国内規則及び実務の相互尊重の必要性を認識し、協力することに特別な重点を置く。
1.3 海難調査及び同海難の報告についての共通手法を導入することにより、国際海事社会は、海難の誘因及び原因又はその与因について、よりよく知ることができるであろう。これは、次のことにより促進されよう。
.1 海難調査の目的及びそれを実施するための指針を明確に定義すること。
.2 実質的に利害関係を有する各国間の協議及び協力の枠組を定義すること。
.3 調査に協力しようとしている個人が、自己負罪からも、その後の生活上の危険からも、ある程度の免除が与えられるならば、情報の自由な流れが助成されることを認識すること。
.4 公表すること及び学ばれるべき教訓の共有を容易にするため、報告のための共通の様式を確立すること。
1.4 このコードの目的は、どのような調査形態であっても、それが民事、刑事、行政又はその他の訴訟形態のためであっても、排除するものではなく、海難に関連する事実の認定、原因の認定、海難原因の公表、及び適切な安全勧告をすることを目標に海難調査の手続を創設することである。理想的には、海難調査は、その他のいかなる調査形態からも分離独立したものであるべきである。