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現時点では、韓国の大型エンジン業界は供給不足であり、日韓間で激しい競争は起きていないものの、以上のような状況の変化により、大型エンジン業界でも日韓間で競争が激化する可能性も念頭に置かなければならない。

 

2. ディーゼル・補機関

(1) 業界構造と各社概要

韓国の補機市場は現在、年間500台強であるが、大型エンジンとは異なり、市場の3-4割程度が輸入品で占められている。輸入は船主指定によるもので、輸入先は日本メーカー、ワルチラが中心となっている。日本やアジアの有力船主には、依然として韓国製補機を避ける傾向がある。この点について、韓国造船機資材協同組合では、船主の意向があるため今後も輸入品が一定のシェアを維持していくものと見ている。

他方、韓国国内の生産企業は前述のように現代重工業、双竜重工業となっている2。生産台数は両社とも200〜300台程度となっている。生産数量のうち、8割が韓国国内向け、2割が台湾を中心とした輸出向けとなっている。(台湾市場では、ここ数年間、韓国製補機が市場全体の4割程度を占めている。)両社とも独自モデルは保有しておらず、揃ってMAN B&Wのライセンス生産が中心となっている。韓国国内の取引関係は、現代重工業新造船部門は自社から、大宇重工業は、双竜重工業からそれぞれ補機を調達している。他の主な造船企業は、現代重工業、双竜重工業の双方から補機調達を行っている。

 

1] 現代重工業

現代重工業は、「重化学工業投資調整」解除による生産自由化により中型エンジン生産に参入しており、生産開始後10年程度経過している。最近では、主機・補機をパッケージで販売するなど、総合力を軸に販売攻勢を強めている。

現代重工業の中型エンジン生産設備と主な生産品は、表のとおりである。1999年に生産能力を年産300台から同500台に拡大させている。この生産拡大の評価については、現地調査の結果からは積極的な見方は聞かれていない。他社によると、現代の中速エンジン工場は公称500台/年であるが、実際は300台/年がせいぜいであり、トップから公称どおりの生産を指示された実務担当者が苦労していると言う。この観測によると、現代重工業が生産規模を拡大した理由として、1)工作機械生産中断に伴う余剰スペースの活用、2)船主の要請(従来、生産スペース、設備とも十分なものではなかったと言う。)にあるとしている。また、インタビューでも現代重工業担当者は、年産500台は難しいことを示唆している。

 

2 現地報道によるとHSDエンジンも中型エンジン事業への参入意志を示している。

 

 

 

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