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8. 日韓造船企業の競争力比較

(1) 日韓建造コスト比較

韓国の造船企業は、VLCC、大型コンテナ船需要拡大を見込み、この需要を取り込むべく大型船の連続建造を前提にした設備増強を行ってきた。その結果、大型コンテナ船、VLCC建造に適した生産体制となっており、この分野の受注では日本を圧倒している。かつては、日韓の船価差が10%程度であれば、総合的な競争力は同等であると言われていた。しかしながら、現在では、特に韓国が建造実績を蓄積している船種については、日韓の非価格競争力格差は大幅に縮小し、「数%でも船価が安価な方が強い」(日本大手国内船主)という状況になっている。この間、韓国企業が製品の信頼性を高め、新造船引渡し時期が守られるようになってきたためである。このように日韓間の非価格競争力は大幅に縮小している。

日韓の建造コスト格差は、一般的にはVLCCで2割程度と見られている。建造コスト格差の要因は、人件費、材料費格差の双方にある。人件費に関しては、日韓の労働生産性格差は10〜20%程度と見られるが、賃金水準は前述のように韓国が日本の半分以下であるため、人件費負担は韓国が優位にある。さらに大手造船所を中心に韓国の造船所の生産性はCIMS導入等により向上しており、数年後には日本に並ぶとの見方もある。これらのことから、為替条件が大きく変わらない限り、日韓の人件費負担格差の縮小は容易でないと考えられる。

他方、材料費については、鋼材と舶用機器共にコスト格差が見られる。例えば、日韓の鋼材コスト格差はトン当たり100ドル程度と見られている。(主機に関しては、後述。)

日韓の建造コスト格差は、為替水準によって大きく左右される。しかしながら、1ドル=120〜140円程度の円安にならない限り、両国の建造コストが均衡するのは難しいと見られる。

 

 

 

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