日本財団 図書館


I 事業概要

 

1. 事業目的

 

1995年(平成7年)5月に発効した「1990年の油による汚染に係る準備、対応及び協力に関する国際条約(OPRC条約)」では、大規模流出油事故時における防除計画の策定や防除活動の遂行に当たり、関係者が共通の認識を有することにより作業の迅速・効率化を図り、事故による被害を最小限に抑えるという目的のもと、国際的にはセンシティビティ・マップと呼ばれている情報図の整備が勧められている。同情報図には、当該沿岸域に存在する流出油に対して脆弱な指標が表示されているほか、防除作業にあたっての保護優先度を決定するために必要な情報、油汚染により沿岸域が受ける被害を予測するために必要な情報などが盛り込まれている。

一方わが国では、OPRC条約の批准に伴い1995年(平成7年)12月に閣議決定後、平成9年12月に改正された「油汚染事件への準備及び対応のための国家的な緊急時計画」において、各海域ごとにこれらの情報を例えば情報図などの形で整備することの必要性が盛り込まれている。

既に当協会では、1993年(平成5年度)にセンシティビティ・マップに関する基礎調査を実施し、わが国の実情に即した形で早急にその整備・普及を進めてゆく必要がある旨の提言を行うとともに、マップ作成に関するガイドラインを策定した。当協会では、このような情報図を「沿岸域環境保全リスク情報マップ」と呼ぶこととした。

さらに当協会では、基礎調査の結果に基づき実用面での検討を進めるため、平成7年度から3ヶ年計画により、わが国の主要沿岸域を対象とした係る情報図の試作事業等を行ってきた。即ち、平成7年度は東京湾、平成8年度は伊勢湾、平成9年度は大阪湾を対象として、当該沿岸域の自然環境、社会・経済的利用状況等に関する情報を集約した試作図を作成し、利用者等を対象としたワークショップを通じその有効性等について高い評価を得るに至った。

本事業は、こうして当協会が蓄積した知見等を生かし、ナホトカ号による大規模な海洋汚染被害を受けた日本海沿岸域を対象として、係る情報図を実用に供する形で段階的に整備するものである。即ち、日本海沿岸域を北部、中部及び南部に分け、平成10年度には中部沿岸域、平成11年度には北部沿岸域、本年度には南部沿岸域を対象とした実用図を整備するものであり、国内の流出油防除体制の強化に資することはもとより、今後構築される環日本海沿岸国による地域国際協力体制も視野に入れた上で、日本海の海洋環境保全に積極的に協力することを目的とするものである。

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION