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高速旅客船、カーフェリーなどの就航状況とこれら高速化の安全面での問題点について

 

大阪府立大学大学院工学研究科

教授 池田良穂(いけだよしほ)

 

高速旅客船の現状

旅客船の高速化には目覚しいものがある。国内では二二ノット以上の船を高速旅客船と呼んでおり、日本旅客船協会の調べによると、昨年十一月現在で二八四隻が就航している。最も高速なのはジェットフォイルで四三ノット、続いて四〇ノットのホーバークラフトである。高速旅客船の大半は三〇〇総トン以下の小型船である。大型カーフェリーの中に二九ノットという航海速力を誇る新日本海フェリーの「すずらん」「すいせん」などの高速船が現れているが、こうした大型高速客船の数はまだ少なく、前述の統計の中には入っていない。

一方、海外においては比較的大型の船でも三〇ノットを超える船が珍しくなくなり、四〇ノット、五〇ノットを超えるアルミ製旅客船もたくさん現れるようになっている。特に、四〇ノットを超える船は超高速船と呼ばれており、その中でも十年ほど前に現れたカーフェリータイプの大型化が急速に進んでいる。技術的に見れば、大型化が進んでいるからこそ、高速化が実現していると言っても過言ではない。

十数年前までは、超高速船といえば、水中翼船、ホーバークラフトそしてSESなどの比較的小型の特殊船と決まっていたが、現在では排水量型の大型超高速船が増えており、さらにその中心は、前述のように車を搭載するカーフェリーである。

例えば、ステナラインのHSS一五〇〇型の双胴高速カーフェリーは、二万総トン、四〇ノットという、高速大型船であり、一五、〇〇〇人の旅客と三七五台弱の乗用車を搭載する。主機は、ガスタービン機関四基で、総出力七八、〇〇〇キロワット馬力に直すと一〇万馬力ということとなる。またサルジニア島航路に投入された、ティレニアラインの単胴高速カーフェリーMDV三〇〇〇ジュピター型の四隻は、全長が一四五メートルと在来のカーフェリーに負けないくらいの大きさだが、航海速力が四〇ノットという韋駄天船であり、利用者にも喜ばれ、離島航路の活性化に大きな寄与をしていると伝えられている。

 

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2万総トン 40ノット HSS1500型 第1船「ステナ・イクスプローラー」

 

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イタリアの145M型単胴高速カーフェリー MDV3000「アリエス」

 

 

 

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