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(4) まちづくりの基本方針

日野地区のまちづくりの目標は、歴史・文化・交流の3要素を統一したまちです。それでは、その3つの要素に基づき、まちづくりの基本方針を考えてみましょう。

 

歴史を守り、活かすまちづくり

蒲生家の城下町から始まり、近江商人のまちとして栄えた「日野地区」は日野町の発祥の地といえます。往時の面影が薄れつつある現在にあっても、日野町の歴史を語る生き証人として、次代に継承していく責務があります。特に、人口増加が停滞し、空家が増加し、地域の個性が失われつつある日野町にとっては、日野町民のアイデンティティを形成する最も大きな要素です。その歴史を何としても守っていく必要があります。それとともに、歴史的資源を活かしたまちづくりを地域の活性化と結びつけていく必要があります。

 

文化と暮らしが息づくまちづくり

市街地の変貌が進む日野町の中心市街地にあって、日野地区は歴史とともに、祭り等の伝統文化が息づき、周辺には自然環境が豊富にあるまちです。特筆すべきは、日野祭りの山倉とともに、桟敷窓がある板塀がそこそこに見られ、祭りのとき以外でもその風情が感じられることです。そこには、暮らしと伝統が見事に息づいた姿を感じることができます。また、町並みの周辺には、中野城址を始めとして、緑が豊富な社の杜(もり)があります。従来は、通りの両側の側溝にも美しい水が音を立てて流れていたことでしょう。

暮らしの中にこういう身近な文化や自然が息づいているのは素晴らしいことです。それらを保全・継承し、さらに親しみを持てる整備を行っていく必要があります。また、暮らしをささえる「みち」や施設の生活環境を整えることも大切な事です。

 

訪れる人に丁寧なまちづくり

日野地区は近江商人という歴史的に先進的な交流をベースに発展したまちです。したがって人々との交流にかけては先進的なまちであったはずです。しかるに今近江鉄道日野駅、JR琵琶湖線近江八幡駅に降り立っても十分な案内がありません。歴史的資産を活かしたまちづくりは全国で展開され、蒲生氏郷と近江商人のまち日野を訪れる人も日野商人館を始めとして相当数にのぼります。観光化による公害を憂慮する声もありますが、その前に最低限の受入れ体制を整備し、訪れる人に丁寧なまちづくりをすることが、歴史的まちなみとして守り、育てるかどうかにかかわらず必要なことといえるでしょう。

また、商業の再生を考えるとき、地域商店街の生きる道は地域の手軽さと利便性を最大限にいかした商業か、歴史を活かした観光商業への志向以外にはありえません。いずれにしても、交流の整備はその柱となるものです。

 

 

 

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