日本財団 図書館


3-3 日野祭りと桟敷窓

 

今まで日野地区では、日野祭りと桟敷窓についての調査が行われている。ここでは、奈良女子大学増井研究室の調査結果をまとめるものとする。

 

第一節 歴史的居住地としての日野

 

日野は城下町を起源とし、その後在郷町として発展した都市であるが、宝暦の大火をきっかけとして生垣から高塀の連続するまちなみへと変化した。現在は、閉鎖的な空間構成となっているが、大正、昭和に行われた道路拡幅などにより板塀や桟敷窓が減少し、近年の建物の更新により駐車場などの空地も増加し、景観が変容しつつあることが明らかになった。しかし日野は木造の伝統的住居がよく残っているといえる。本研究で調査を行った町家については江戸時代から明治時代に建てられた伝統的なものが多く、また町家の空間構成については、平面形態は周囲の農家に類似しているものの、街路に面して主屋を建て前面に接客空間であるオクノマと次の間であるデノマを設け、主屋の奥に離れ座敷や土蔵を設けることが一般的であることが明らかになった。さらに規模は異なるがどの住居も平面形態や建物の配置などにおいて類似した空間構成をもつことが明らかになった。また建物を更新する場合にも伝統的な空間構成が継承されている。

 

第二節 日野の祭礼時の演出の特徴

 

日野祭では、町家の通りに面した表側の部屋すなわちデノマとオクノマがしつらえられる。そのしつらえの代表的な演出要素が軒先の提灯や桟敷窓にしつられえられる毛氈や御簾、室内においては屏風であるがその他にも衝立や生花、曳山模型などもみられた。デノマとオクノマのしつらえについては、境界要素の有無や、桟敷窓の有無などとの関係は特に見られず、本来のオクノマの機能である接客空間としてのしつらえが行われていること、その次の間としてのデノマの機能が確認できた。なおデノマとオクノマを続き間で使用し、デノマを接客空間の一部として利用している例も見られた。

日野における祭礼時のしつらえの特徴は、屏風やその他の演出要素が祭りを「見る」ためすなわち祭礼を迎えるための空間をしつらえるための装置であることである。桟敷窓や桟敷という名称通り、また桟敷窓が設けられていない場合にも、町家が桟敷空間として機能し、曳山や御輿を迎えるためにしつらえを行っているといえる。しかし中には、オクノマからヘヤまでを開放とし、屏風を両側にしつらえ、中庭までを「見せる」しつらえや、曳山模型などの「見せる」ための演出要素も見られ、展示空間として町家が利用されている例も少数ではあるが、確認できた。

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION