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2-4 歴史的資産を活かしたまちづくりの意義

 

1] 現状と今後の改変に対する危惧

日野町は蒲生氏郷のふるさとであり、近江日野商人の発祥の地としての町民のアイデンティティは形成されている。それは、単に歴史上の事柄ではなく、城下町当時の町割、歴史を忍ばせる町家の残存、日野祭の巡行の通りに面した桟敷窓の個性的で落ちついた町並みに象徴されている。今までは、まちの停滞もあってなんとなく残ってきたきらいがあるが、時代の流れとともに、無住・老朽化が進み、取り壊され空地になったり、現代風に改築されることが目立つようになってきた。このままでいけばいずれ日野の町並みは失われてしまうのではないかという危惧が最も大きい点である。

 

2] まちの活性化の引金として

日野町の中心市街地の空閑地部分は土地区画整理によって基盤整備が行われ、新しいまちづくりが進行しつつある。しかしながら、既存市街地部では商業の停滞等問題が大きく、それに対して有効な手だてが打てていない状況がある。既存商店街の再生については、成功している事例の多くが、地域の資源を見直した地域の利便性を重視したもの及び歴史観光と連動を図ったものとなっており、日野町においても、歴史的資源を見直したまちづくりが活性化の重要な要素となると考えられる。

 

3] 住民とのパートナーシップのまちづくりとして

日野町では、第2次及び第3次総合計画等の基本方針に「町並み保存」を明記し、武家屋敷や日野商人の本宅調査の実施と近江日野商人館(山中兵右ヱ門家)・旧正野薬品店を町有にするなど保存に努力してきたものの、自治会や住民と一体となった施策展開はほとんど進展しなかった。歴史的な町並みは形成する家屋が個人所有であるため、強制的な規制や制限を加えることは望ましくない。あくまで、住民が主体となったまちづくりのなかで考えていくべき問題である。今回の取り組みにあたっては、住民とともに、あるべき方向を考え、共通した基盤に立ってまちづくりの実現に努力していくことが重要である。

 

 

 

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