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ここでは、地下水は溶岩空洞中に自由地下水として存在する。井戸を掘っても必ずしも水を得られるとは限らず、この地域は古くから水の取得に苦労した地域である。

この地域の地下水資源の開発は、かって、米軍東富士演習場の補償問題と絡んで、農業整備事業の一環として、標高700m以下のところで深さ50〜120mの深井戸が20〜30本掘削され、2,400〜2,500m3/日の地下水が利用できるようになったのが始まりである。

富士山の南東側斜面黄瀬川水系の地下水の酸素同位体比δ18Oは-9.1〜-6.4%。で、他の斜面の水系の同位体比より重く、涵養地域の標高が低いことを示す。これは、黄瀬川の西に標高1458mの愛鷹山、東に標高1108mの箱根外輪山があり、富士山系の地下水に加えて愛鷹山系、箱根山系の地下水の混入によって形成されているためである。

御殿場から三島にかけて愛鷹山と箱根山に挟まれた南北の谷間はやや平坦な台地で、その上を黄瀬川が流れている。地質学的には新富士山火山活動の旧期(ほぼ1万年前)に多量の流動性の大きい玄武岩溶岩を噴出する活動をしたが、その際に山頂から40kmにわたって三島まで流下したのが三島溶岩流である。三島溶岩流は三島市街地域の地下では完新世の砂礫層を覆って分布している。また、この溶岩流は完新世の新期泥流堆積物によって覆われている。菰池、白滝公園、小浜池等の三島湧泉群の湧水は、この三島溶岩流の末端で、溶岩が地表に露出しているところに分布している。

溶岩はそれ自身不透水性であるが、空洞、節理、多孔質部分(クリンカー)があり、溶岩流層として地下水を導くので、帯水層と考えることができる。三島溶岩流のように流動性が大きい溶岩は、一般に厚さは薄く、全体が30mとすると何枚も重なっていることがおおく、多量の地下水の媒体となる。

地下水が何時、何処から流れてきたか、どのように流れているのか、という地下水系の流れを明らかにするには

1 地下水に溶存している塩分の化学的性質

水温(Tw)、電気伝導度(EC)、pH、Na+、K+、Ca2+、Mg2+、Cl-、SO42-、HCO3-、NO3-など

2 地下水の酸素と水素の同位体比および放射元素の半減期

18O、および3H(トリチウム)

を調べて明らかにすることができる。

柿田川や三島湧水群の地下水の供給源は、地形から、まず富士山水系、愛鷹山水系、箱根西斜面水系と想定される。

地下水に溶存している塩分の化学的性質をみるために、

富士山系(南東斜面と山麓湧水)、箱根西斜面系(三島市の東の箱根西斜面湧水、沢水)、愛鷹山系(東山麓の地下水湧水)についてヘキサダイアグラムを描くと下図のごとくである。

 

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