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このような良い例として、畳一畳よりも大きな結晶が見つかっている。カナダのケベック州で掘り出されたもので、ロイヤルオンタリオ博物館に展示されている試料の画像を撮影した。このウンモを薄くはぐと、紙よりも薄い透明な薄板にはがすことができる。これが層状ケイ酸塩鉱物といわれる所以である。

炭素質コンドライトにある層状ケイ酸塩鉱物は、六角板状のケイ酸シートにそって鉄やマグネシウム、アルミニウムを含んだ層がついている。その酸素の一部をOH基でおきかえており、水の源となっている。層と層の間にも、水分子が含まれるものがある。このように鉱物の原子の骨組みの中に水が取り込まれると、100℃を少々越すような温度に加熱しても逃げないので、隕石の故郷から地球にやってくる間に水は逃げないで保存される。

 

4. 海の水はコメットから来たのか小惑星からの始原的隕石から来たのか?

始原的隕石の主要鉱物が粘土鉱物の一種であることが電子顕微鏡の観察でわかってきたが、これらの鉱物がどのようにしてできたかは、炭素質コンドライトが本当の始原的物質かどうかを判定する根拠を与えてくれる。従来の考えでは、低温になった星雲から直接凝集したものであるというのが定説であった。しかし、これがもし、地球の粘土鉱物ができたように、小惑星の天体内での風化作用でできたのであれば、もはやこれらの物質は始原的であるという根拠を失う。

これらの粘土鉱物の組織を詳しく観察してみると、もとあったカンラン石や輝石が粘土鉱物に変わったという状態を示すものが発見された(付属資料「フランス・オルゲイユに落下した隕石」)。これはもとあったカンラン石が、水の作用で、粘土鉱物に変わったものと解釈される。これらの事実より、上記のオルゲイユ隕石に代表される水を含む始原的隕石は、実は本当の始原的物質ではなく、微惑星内で起こった水が関与した変成作用(水質変成)でできたものであることが明らかとなった。太陽系の本当の始原物質は、いまだ地球上では発見されていない。始原的物質のチリと氷よりなる微惑星が、水質変成を受けて、水を含む鉱物に変わるモデルを実像化するため画像(付属資料「フランス・オルゲイユに落下した隕石」)を作成した。

今回の小惑星・コメット会議では、この仮想的な始原微惑星が、コメットであるのか、それとは別の始原的隕石のできた小惑星の変化を受けていない初期の姿であったのかを考えるよすがとなる、多くの成果が発表された。これはコメットや小惑星の近赤外線スペクトルの地球よりの望遠鏡による観測、コメット、小惑星の軌道の変化に関する理論的研究などの成果である。

以前はカイパーベルトやオルト雲などは、コメットの故郷の仮想的天体であったが、最近ではその軌道とスペクトル観測により、多くの実在の小天体が発見されている。これらの成果をまとめて、コメット研究の草分け的存在であるハーバード大学のウィプル教授が話をした。彼によると両者は関連した天体であり、その起源を以下のごとく提唱している。

「短周期の93のカイパーベルト(KB)コメットと14のハレー型のコメットを含むオルト雲(OC)コメットの大きさの変化を研究した。その活動を、2つの規準を用いて判定したところ、整合性ある結果を示した。KBコメットはOCコメットよりも、太陽からの距離が大きいところで、より活動的である。この結果はKBコメットはOCコメットよりも太陽より遠く離れた所で、より低温で形成されたこと、および低温でのみ凍結することができる物質の氷をより多く含むのではという期待と一致している。

 

 

 

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