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最近、レナッツォというイタリアのフェラーラに昔落下していた隕石の反射スペクトルに似たものであることが解ってきた。この隕石は炭素質コンドライトのうちでは希なものである。セレスは、炭素質コンドライト類縁のものでは最も大きなものである。しかし、その表面がどのような形をしているものであるかは不明であった。

 

2.2 はじめて撮られたC型小惑星の姿

炭素質コンドライトの表面が最初に観測されたのは、一昨年アメリカのNEAR探査機によってであった。セレスよりはずっと小さいマチルダという小惑星で、やはりその反射スペクトルから、炭素質コンドライトに近いものだといわれていた。初めて観測されたマチルダの表面は、大小のクレータで覆われた、いびつな形をしていた。この時観測されたマチルダの密度は、水より少し重いくらいで、非常に軽いものであった。このような密度の低い小惑星でも、大きなクレータができる時に壊れないでいるということは、一つの謎として残されている。粘土鉱物のうちで、セピオライトという物質は、たばこのパイプに用いられる鉱物で、非常に軽いが強いものである。この鉱物の研究で、次に述べるマチルダの強さの不思議がとけるかもわからないので、その試料収集を行った。

地球に豊穣な環境をもたらす水の故郷がセレスという小惑星であるのも、面白い関連性の一つである。セレスは、ローマ神話に登場する豊穣な大地の神様である。地球の水の故郷であるセレスの表面と、この神様のイメージをタイトル画として表したのが、添付した図である(付属資料「フランス・オルゲイユに落下した隕石」)。隕石衝突をしてできたクレータに溜まった湖から、水を蓄える鉱物ができるイメージを表現したものである。

 

3. もっとも水を多く含む始原的隕石

始原的隕石にも4種類ある。その分類記号がCI、CM、CO、CVの順に水を含む量が少なくなる。このI、M、O、Vはイブナ、ミゲイ、オーナン、ヴィガラノの各隕石の頭文字をとったものである。オルゲィユ隕石はCIの代表的なもので、よく調べられている。フランスのモントーバンに落下したもので、フランス国立自然史博物館に保存されている。この隕石の落下にまつわる資料を集め、現地調査を行った。この隕石は、水や有機物を含むので、生命の化石があるのではと言われたことがあり、太陽系最古の物質として重要である。別種のもので水の少ない種類のCVの命名の基準となったものは、ヴガラーノ隕石である。隕石ハンティングの面白さも示すため、これら隕石の落下当時の様子を記録した仏伊語の文献を取り寄せ、翻訳し、回収状況を明らかにした。オルゲィユ隕石原石の写真撮影に成功した。

 

3.1 オルゲイユ隕石原石の落下調査

この隕石は元素の宇宙存在度を導き出すのに用いられている最重要な隕石であるが、この種の炭素質コンドライトはススの固まりのようなもので、その実像は教科書などにもあまり掲載されたことがなく、どのくらいの原石試料が保管されているのかも良くわかっていなかった。

今回ACM学会出席のための旅行を延長し、フランスにおいて詳しい調査を行った。パリのフランス国立自然史博物館では、キュレーターのブリジット・ザンダ博士の好意で、すべての大きい標本の写真撮影を行うことができた(付属資料「フランス・オルゲイユに落下した隕石」)。

 

 

 

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