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中央アフリカ共和国協力計画

2000年度調査報告書

(寄生虫対策調査)

辻守康、下田健治、寺地弘行

 

【要旨】

数年来政情不安であった中央アフリカ共和国が、ここ1〜2年は落ち着いているとの連絡を現地の保健省および日本大使館から戴いたので、本年度は例年通りに辻、下田、寺地の3名で平成12年8月の雨期に現地調査を行った。中央アフリカ共和国では政治情勢が如何に変わろうとも笹川記念保健協力財団による調査が期待されているとのことで、今回も空港には日本大使館の黒沢医務官、バンギー大学医学部のカモウネ医学部長、バンギー大学医学部眼科学教室主任兼バンギー中央病院眼科部長のヤヤ医師が迎えに来ており、保健省の第一地方医務局長のヤシポ医師はホテルで待っていた。

今回は例年のごとく、ケラ・セルジャン村およびバンザ村での血液検査、糞便検査と治療を行うとともにウワンゴ診療所では検便、検尿と治療を行った。

本年度の受診者はケラ・セルジャン村が203名、バンザ村が73名、ウワンゴ診療所が241名の計517名である。厚層塗抹法とMGL法による検便の結果、ケラ・セルジャン村では蠕虫卵の陽性率は60.8%で特に鉤虫卵陽性が45.7%と多く、住血吸虫卵陽性は27.1%であり、また原虫嚢子陽性は63.3%で、その中赤痢アメーバ陽性が11.1%、ランブル鞭毛虫陽性が9.5%であった。バンザ村でも蠕虫卵の陽性率は50.8%で、すべてが鉤虫卵陽性であった。また原虫嚢子陽性は42.9%で、その中赤痢アメーバ陽性が17.5%、ランブル鞭毛虫陽性が11.1%であった。ウワンゴ診療所では厚層塗抹法のみであるが、蠕虫卵の陽性率は16.2%で、鉤虫卵陽性が8.7%と多く、マンソン住血吸虫卵陽性は2.1%、また検尿の結果3.1%のビルハルツ住血吸虫陽性者が検出された。一方、血液検査によるミクロフィラリア陽性率はケラ・セルジャン村では11.3%で、陽性者中ロア糸状虫陽性と常在糸状虫陽性がそれぞれ65.2%と60.9%と大差なく、バンザ村では24.7%がミクロフィラリア陽性で、この陽性者全てから常在糸状虫のミクロフィラリアが検出されている。またマラリア原虫の陽性率はケラ・セルジャン村では57.6%、バンザ村では80.8%であり、両村とも四日熱マラリア原虫の方がやや高率であった。

また、今年度全検査を受診した人はケラ・セルジャン村で199名、バンザ村で60名であり、その陽性率はそれぞれ93.0%と93.3%であった。またケラ・セルジャン村での1人平均感染寄生虫の種類は2.98種類と昨年度の3.00種類とほとんど同じであったが、バンザ村での1人平均感染寄生虫種類は2.87種類と昨年度の3.26種類より少なかった。

なお、今回はkm24のハンセン病診療所を訪問したが、5名の入院患者がおり、ここの診療所における新患は2〜3ヶ月に3〜5人程度であるとのことであった。職員の2名の看護士、1名の検査技師、1名の薬剤配布人もハンセン病予防教育のためによく活動していた。

 

 

 

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