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展望:

モザイク肝という特徴的な所見が観察されないことから、日本住血吸虫症において一般的に汎用されている大前の分類法は、メコン住血吸虫症においては有効な分類法とは言い難い。さしあたりメコン住血吸虫症における特別な超音波所見は見あたらないことから、マンソン住血吸虫症における肝内門脈支を中心とした肝臓実質の繊維化像による新たな分類法を本症において目指すのが現段階では適当と思われる。また、Kratie省のマラリアとメコン住血吸虫症の重複感染地においては、今回多数の患者に巨大脾腫が観察され、このために右肋骨弓下走査による肝臓の病態の観察が困難となる事実から、肋間走査での肝内門脈支並びに肝実質の観察による、メコン住血吸虫症の新たな分類法の確立を提唱したい。またメコン住血吸虫症の感染地域の多くはマラリア感染地でもあることから、これら2つの寄生虫症を有機的に結びつける事を考慮した調査が今後期待される。

 

表4 カンボジアにおけるメコン住血吸虫症の肝臓超音波所見

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