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2. 実施内容

本年度の調査では、2000年5月21日から6月7日までの期間、松田肇、大竹英博、松本淳の3名が派遣された。最初の調査地であるスタントレン省では、5月24日から5月28日までの期間に、メコン川本流域および支流域の4地区の小学校を訪問して学童から採血と糞便検体の採集を行うとともに、各地区で一般住民からの採血と腹部超音波検査を実施した。続いて5月30日から6月1日にはクラチェ省の2地区で、さらに6月2、3日の両日には、カンポンチャム省の1地区において、学童からの採血と糞便検体の採集、および一般住民からの採血と腹部超音波検査を実施した。

学童を対象とした血清疫学調査の結果、各地区の抗住血吸虫抗体陽性率は次の通りであった。Preah Rumkal:56.7%(120;検査例数、以下同じ)・Koh Sneng:19.0%(63)・Sdau:86.8%(53)・Pluk:32.3%(31)(以上スタントレン省の4地区)・Kbal Chuor:97.1%(70)・Kanh Chour:7.8%(90)(以上クラチェ省の2地区)・Ta Meang:8.0%(100)(カンポンチャム省の1地区)・本年度の調査では、血清検査に加えて糞便検査をおこなった結果、メコン住血吸虫の虫卵陽性検体は、Kbal Chuorの1例のみであった。住血吸虫以外の寄生虫としては、鉤虫(陽性率49.0%)および蛔虫(陽性率18.5%)の虫卵が高頻度で検出された。昨年度の調査に引き続き、腹部超音波検査をスタントレン省およびクラチェ省の5地区で、大竹専門家が中心となって実施した。総被験者数246名のうちメコン住血吸虫慢性感染による明らかな肝繊維化像が観察されたのは73名であった。そして肝超音波像で何らかの異常所見が観察された被験者を含めると合計113名の住民に何らかの肝病変のある可能性が推察された。しかし、最も重症化した病変であるモザイク肝を示す腹部超音波は、昨年と同様に高度流行地においてもまったく観察されなかった。さらに保虫宿主動物における感染状況の調査として、クラチェ省のKbal Chuorで飼育されているイヌの糞便検査を実施した結果、28検体のうち1例からメコン住血吸虫卵が検出され、カンボジアにおいてもイヌが保虫宿主動物として本症の伝搬に関与していることをはじめて確認した。

来年度の寄生虫対策援助計画の実行・継続の可能性と実施内容に関する調査には、松田肇とバルア・スマナが11月30日から12月4日の期間派遣された。プノンペンの国立マラリアセンターで所長Dr. Doung Socheat、全国住血吸虫症対策統括責任者Dr. Muth Sinuon、およびWHOカンボジア事務所Dr. Stefan Hoyerと会談し、「カンボジアの住血吸虫症対策にとって笹川記念保健協力財団の援助協力は不可欠であり、今後とも是非継続して財団の支援と協力を得たい」旨の要請を受けた。

 

 

 

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