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良き友人と、為になる経験と、考える端緒を得た旅を終えて

渡三佳(千葉大学医学部5年)

 

フィールドワークフェローシップに参加できて、私はとても幸運だったと思う。保健医療に携わる様々な立場の方々から直に話を聞くことで、国際保健の現状を垣間見ることができ、さらに自分の将来を考える上でも参考になることが多々あった。

<動機>

臨床実習で初めて手術を見たときに受けた衝撃は忘れられない。おびただしい数の滅菌布やガーゼが使い捨てられ、人工心肺なども最後には医療廃棄物のダンボールに詰め込まれる。数箱の「ごみ」を見ながらなんともやるせない気持ちになった。「もったいない」ように見えることも治療や感染予防のためには仕方のないことだと分かってはいても、貧困で簡単な医療すら受けられない人々が世界には多くいるということに思いをめぐらせてしまったからだ。「例えばこの手術費用を予防接種やもっと基本的な医療に使ったなら、いったいどの位の人が救えるのだろうか。」苦しんでいる患者さんを目の前にして、こんな考えを持つことはもちろん不謹慎だろう。しかし、一度芽生えてしまったこの疑問は、実習中常に頭のどこかに巣食っているようになってしまった。ここから国際保健協力を勉強したいという気持ちを強く持つようになった。さらに、公衆衛生にもともと興味があったこと、ラオスでの小学校建設の手伝いというNGOのワークキャンプに参加したとき、「NGOは点への援助しかできない」という悩みを聞いたので、GOでは点を結び合わせるような援助ができているのかを知りたいと考えたことも今回参加した動機である。

<フィールドワークフェローシップに参加して>

内容の濃いプログラムだったことと、自分が勉強不足だったこととで、まだ消化不良な点も多いと思う。それは反省点としてあるが、今後自分が学んでいく過程で時折今回の経験を振り返って考え直していきたい。

以下に現段階で感じられたことのうちのいくつかを記述したい。

・衛生環境を改善するには人材の育成と『教育』が重要である

今回は保健に携わる大組織(WHOなど)から、小さな単位(BHS)まで見ることができた。そこで感じたのは衛生観念を住民に行き渡らせるにはBHSのミッドワイフやヘルスワーカーの役割が大きく、これらの人材の育成は地域住民の健康維持にとって重要だということである。そして彼女らの教育において、上の立場の人材の教育も重要である。また、衛生環境の整備にはより大きい組織での人材が重要な役割を果たす。例えばBHSを統括するRHUは、そこの所長の才覚によってかなり住民へのサービスに差があるように感じた。

・ODAについて

日本の莫大なODA(国民一人あたり約1万円/年)について、正直に言うと疑問を感じていた。国内の経済が芳しくない上、医療費の個人負担の引き上げや介護保険の導入などの行われている現在、国内において予算を使うべきところがあるのではないかと思ったからだ。日本の納税者の立場にたって考えると、今もこの思いはある。しかし、今回、直にODAの使われ方を見ることができ、途上国の人々の役に立っているものなのだと実感できた。特に印象に残っているのは日本の母子手帳を訳して配っていたということで、素晴らしいことだと思った。

 

 

 

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