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<特別講演>

 

日本住血吸虫と国際保健について

安羅岡一男 筑波大学名誉教授

 

日本住血吸虫は雌雄異体で、雄が雌を抱擁するようにして門脈内に寄生。虫卵は帯黄色楕円形で卵殻の一側に小棘を有し、卵内はミランジウムを蔵す。終宿主はヒト、ネコ、イヌ、ウマ、ブタ、野ネズミ等。中宿主はOncomelania属の小巻貝で日本では宮入貝であり、山梨県に1,300ヘクタールだが、未だに生息している。中国、韓国等に生育する住血吸虫が感染しうるため旅行者や住民などから今後感染する可能性は否定できない。広島県や他地域では宮入貝絶滅に成功しており、有効な薬剤使用による駆除が望まれるが国の補助金による用水路の整備が行われていることもあり、行政側は駆除に乗り気でない。

レイテ島に住血吸虫センターがある。

(戦後、米軍が上陸し、飛行場や橋を建設した。兵士が橋を作る際、住血吸虫に水系感染し、Drがレイテ島に入った。米軍撤退後、JICAが入り、機材供与と技術援助をした。現在は日本財団が引き継いだが金額縮小のため糞便検査、免疫学的検査等の技術援助中心となっている。)レイテ戦記で有名なレイテ島はルソン島と並び大戦中は戦況厳しく、住民は戦後20年たってJICAが援助し始めたところも日本人を受け付けなかった。その頃の日本は現在のような国際化がブームになっておらず、海外派遣を許す大学も少なかったため、人材を探すのは非常に難しかったが、そんな中でも一番人格を重要視して人選したJICAの専門員として赴任し、メイドや運転手がいる生活に慣れると、語尾にPleaseをつけることを忘れがちになる人もいる。どんな立場の人にも、思いやりをもって丁寧に接することができると思われる人材を送りつづけることで、住民の理解を徐々に得ていたように思う。

援助する際には、人々が機材のメインテナンスのことまで考えているかや、住民が水浴びをしながら用を足す習慣があることなどを知っておくことが重要である。また、レイテ島で治療や調査に必要な自動車を供与したが、DOHで利用されてしまうなどということもあった。

日本が作った住血吸虫のための研究所に現在いるのはアメリカ人、オーストラリア人、フィリピン人だが、フィリピン人の研究者は疫学調査等はせず、ワクチン開発を研究している。しかし、フィリピンは水質が悪く、電圧が安定していないため、ワクチン開発には適していない。採血した血液をELISAで調べないかと持ちかけても断られており、長靴を履いて実際に調査しているのは日本人である。何故、欧米と同じ仕事をしたがるのだろうか?

 

先生は、フィリピンヘ行くのが最後だってこと本当に知っていたんだろうか?。というのも講演中、言葉の重みがあまりにも身をもって伝わってきたからです。あの先生の話しを聞いて、知識は覚えて教えられても、生き方はその人でしか伝えられないってこと、本当に実感しました。だって思いやりの話しは、先生が本当に自分の人生の中で実践してきたからこそ、感動できたんだと思う。4月に学校が始まり、講議で医の倫理に関するものもあったけど、こんな感動はなかった。やっぱり本に書いてあることをただいってるだけのような気がして。実際の生活の中から出てきたその人の哲学ではないような気がする。その人が本物か、本気でないのかっていうのは、やっぱり分っちゃうんじゃないのかな。安羅岡先生が、もし、自分の死期を知った上で、あの話しをしていたと僕は思います。 (田中)

 

 

 

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