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<特別講義>

永井周子先生

夜1時間ほど、永井先生の作ったCASE STUDYが行われた。

<内容>

東南アジアのA国についての歴史(独自の王朝が栄えた歴史を持ちが、1960年半ば以降内戦状態が続き国土は荒廃、壊滅状態になった。国内の状況を改善するには国外からの介入が不可欠。保健医療分野でも機材、人材、健康概念全てにわたり不足している。)保健指標、保健医療供給システムのデータが与えられ、その後3つの問いが出された。

・まず、どの分野から取り組むべきか?

・日本が国立母子保健病院の大幅改修をすると決まり、プロジェクト方式技術協力の事前調査が依頼された。どんなプロジェクトを計画するか?

・私達は村に井戸を掘るNGOのメンバーである。A国の一地方村で働いていたところ、JICA及び母子保健病院からTBA(伝統的産婆)の教育トレーニングコースを開始するので適当な人材を紹介して欲しいという依頼が来た。どうする?

 

私たちは3グループに分かれ、それぞれの問いに対して5分間の議論で各グループの意見をまとめ、1分間で結論とそのように考えた理由を明確に発表する。発表者は毎回変えること。その後質問があれば出し合う。

 

<考察>

5分間で意見をまとめるのは時間が足りなくて難しかった。しかし、政策を決定する立場の人が迷っている間にも、その国の人々は苦しみ続けているのだから、出来るだけ早く政策を計画、実行しなくてはならないということに気付いた。答えのない課題、ましてや、すぐに結果が出ない課題に取り組むのはとても勇気がいると思った。自信が持てるような正確な、豊富な知識が必要だが、どんなことにも対応していけるような流動性と豊かな想像力も必要だと感じた。わかりやすく説明するということも難しかった。ちょっとした表現の違いが誤解につながることもある。他の国からやって来て活動している立場の人間が、どの程度現地の人々との関わりを持つのがいいのかは状況によって違うから、一概に決められないことだ。善かれと思ってすることが介入しすぎてうまくいかない結果を招くこともある。基本は人と人との関係を大事にすることだと思った。私は今までこういう学習をしたことがなかったので、とてもためになった。

最後に、自分が卒後5年目の内科医だとして、JICAのプロジェクトで2年間フィリピンに行かないかと依頼があったら、どうするかというおまけの問いが出された。自分が国際的に活動したいのならば、自分で前々から努力することはもちろんのこと、まわりの協力も不可欠だと痛感した。 (下島)

 

※永井周子先生は群馬大学医学部在学時、'96の第2回フェローとして参加。卒業後は国立国際医療センター研修医として勤務されている。

 

 

 

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