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事例13

先輩の説得で休養、回復したストレス障害(うつ状態)の事例

 

45歳、男、上級地方公務員(県職員)

 

某大都市で大震災が発生し、家屋の倒壊、道路陥没、引き続く火災、多数の死傷者などの大災害がおこりました。

住民の避難や救助、被災者の生活援助などを含む災害対策の指揮をとる立場にいた本人は、災害発生後からほとんど毎日倒壊をまぬがれた役所に泊りこんで、救助活動などの指揮に当たりました。幸い郊外の自宅は辛うじて人が住める程度の被害ですみ、家族にもけが人などはいませんでしたが、自宅へ帰ってみる余裕もないぐらいでした。方々からの連絡を受け、とりあえずの対応を考えなければなりませんし、夜も数時間の仮眠をとるのがせいぜいで、一週間ほど経って、やっと家へ戻ってみることができたとしても、携帯電話で役所から家に連絡が入る。また、役所へ通勤するといっても交通機関もほとんど動かないので、調達した自転車で1時間半から2時間かけて役所へたどり着くような有様でした。

このような状況が1ヶ月近く続き、少し落ち着いたとはいっても、まだまだ様々な問題が山積みの中、本人は次第に心身の不調を感じはじめるようになりました。

仕事に出るのがおっくうで気が進まない。夜眠れない。気分がめいってくる。食事も砂を噛んでいるようで味がないなど本人は疲れているのだろうと自分で言い聞かせていました。事実疲労もたまってはいたわけですが。そのうちに、どうしても仕事をやっていけない、責任を全うすることができないから、辞めるしかないと思いはじめ、辞表を書いて、机の引出しの中へ入れ、いつ提出しようかと思っていました。一方で、仕事熱心で几帳面な性格でもありましたから、ここで仕事を投げ出したらどうなってしまうのだろうという思いとの板挟みになって、益々、うつ状態が強まってきました。さすがにこのころになると周囲も、本人の不調に気が付き、心配しはじめましたが、部下の方から休養をしたらとは言い出しにくいままに、ある日同僚の職員が本人に休養、医師への受診を勧めました。

 

 

 

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