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病院にも、人事配置の都合があることは、本人もよく分かっていました。どうしたらいいのか迷いましたが、仲のよい同僚に、これからのこともあるから、とにかく看護部長に申し出るようにいわれて、手術室の看護婦長を通して自分の状況を説明しました。

主治医のアドバイスと本来は評判のいい看護婦であったことも認められ、とりあえず小児科外来への配置転換となり、これまであった身体症状は回復しました。

ただ、本人としては、自分の看護婦としての適性にやや悲観的となり、職場に対して申し訳ないといった気持ちがあったようですが、周囲の配慮もあって、次第に元気を取り戻し、何とか他のところでも勤まる看護婦になりたいと友人にもらすようになりました。

 

考察

この事例は、ストレスが関係して従来言われてきた、心身症の一つの現れであろうということは容易に想像がつくと思います。

どんな職場でも、人事配置の都合がありますから、本人の希望通りの配置といってもなかなか難しいところがあります。

病院では、確かに看護婦はどの診療科の仕事でもこなせるという教育ということにはなっているとは思いますが、様々な診療科があり、内容もかなり違うことも事実です。本人の向き不向きのあることも否定はできないと思います。

事実、このような心身症を発症した例や、精神的に不調をきたした例がみられます。結局、可能な限り本人の適性を見極め、希望を尊重しての配置が、円滑な業務につながることになるでしょう。もちろん、教育的には、より巾広い看護婦に育てることは大切なことで、ただし性急にことを運ぼうとすると、かえってマイナスになるかもしれません。

ここでは、このような教育システムについて論じるわけではありませんが、このような事例の場合、このことで本人に劣等感などを持たせないようにする配慮が必要であると思われます。

 

 

 

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