日本財団 図書館


事例3

人事異動の時期に不安定となる分裂病の事例

 

38歳、男、地方公務員、既婚、二子あり

大学卒業後、公務員試験に合格

これまで、精神疾患等の既往なし

 

26〜27歳ころから、職場における言動の異常さを気付かれていました。はじめは、何となく落ち着かない、仕事に集中できない、部屋を出たり入ったりする。次いで、周囲の同僚が自分に嫌がらせをする、上司が自分を邪魔者扱いにするなどと、被害妄想的なことを言い出すようになり、全く仕事ができないような状態になりました。本人は、病気だとは思っていませんので、それとなく受診を勧めても承知しません。そこで上司と産業医が相談し、妻を呼んで状況を説明し、職場や妻の協力の元で、やっと精神科医を受診させました。精神科医の診断は、精神分裂病で入院の必要があるということでした。当然、本人は拒否しましたが、何とか入院させることができました。約四ヶ月間の入院治療の後、半年の通院治療と自宅療養で病状は安定し、本人の希望もあり、主治医も何とか勤務できるであろうとの判断で元の職場に復職しました。

なお、この間の療養の状況や病状がよくなっていく様子などについては省略します。

職場に復職し、以前のような目立った異常は認められないものの、意欲に乏しく、仕事もミスはないが能率が上がらないという状況のため、比較的簡単な業務に従事していました。周囲も復職後、間もないからであろうということで対応していました。その後も同様な状況は続き、特に他に迷惑をかけるというようなこともなく、何とか勤務をしていました。

本人には気の毒ですが、当然のことながら、昇進、異動、昇進しての転勤は見送られることになり、はじめのうちは本人も入院したことだから仕方がないと半分はあきらめていたようでした。なお、本人の妻は大変よくできた人で、夫の精神病を理解し、サポートして、決して昇進などあせることはないと話をしていたようです。

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION