6 精神疾患と労働災害
昭和62年に心臓・脳血管疾患の公務災害認定基準(いわゆる過労死の認定基準)が示されて、いくつかの問題はあるにしても、最近は一般的なコンセンサスも得られるようになってきました。過労死そのものがストレスなど大きな関係があるともいわれていますが、それはそれとして、一方で自殺(自殺未遂を含む)した職員についてそれが公務に起因して発症したと疑われる精神疾患に基づくものを労働災害として認めるようにという請求が出てきました。精神疾患については、負傷とか職業病や一部の身体疾患と違って、業務との因呆関係を明らかにすることは必ずしも容易ではなく、個別的に認定されてきていましたが、社会の要請も強くなってくる中で、平成11年に、国家公務員については人事院、地方公務員については地方公務員災害補償基金、一般労働者に関しては労働省が、精神疾患等に基づく自殺の公務ないしは労働災害認定の基準を作成して一般に示したところです。精神疾患に起因する自殺と労働災害という問題は、単に認めるか認めないかということではなく、職場のメンタルヘルスと大きくかかわってくることなので、ここでも取り上げることにしました。
認定基準そのものや、それに関連した解説などもいくつかあり、みる機会もあるかと思いますが、それらを逐次解説するのがこの章の目的ではありませんので、メンタルヘルスと関係のあるいくつかの問題点にしぼって説明をしておこうと思います。
業務起因性ということが一つのポイントになるわけですが、前にも時々出てきましたが、これが職場のストレスと大きな関係をもっているということになるからです。当初は、自殺事例が主でしたが、その後精神疾患そのものについても労働災害と認定するようにという請求が次第に増えてきています。前に説明したPTSDなどというのが、その代表的ものと考えられます。
そこでまず、自殺や心の病気を労働災害と認定する上でのストレスとの関連での問題点をまとめて表にしておきます。