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本当に死にたいのかどうかはともかくとして、何らかの助けを求めているのだと考えて対応することが必要です。

とはいっても、精神科の医師なら見極めのつくことでも一般の人は分からないことが多いわけですし、単純に「がんばれよ」と声を掛けることが逆効果になることもあります。よく、うつ病の人に励ましの言葉はマイナスになるといいますが、それも一律にそうだともいえませんし、結局のところ、いつどういう形で、産業医や精神科専門医に相談するのかということになります。

第2巻「11 二次介入とカウンセリング・マインド」のところでふれるべきだったかもしれませんが、状況をよく把握しないままにうつ病、うつ状態を含む職場不適応に対して上司などが、「だらしがない」、「たるんでいる」とか、更には「自分の若いころには…」といった言動や態度をとるのは、以っての外だということがいえると思います。

実際に一番困るのは、本人から何もいってこない、だれにも相談しないというような人の場合で、簡単にその時はこうすればいいなどといううまい方法があるわけではありません。第2巻「11 二次介入とカウンセリング・マインド」のところなどを参考にして対処してください。ある意味ではケースバイケースということでもありますから、何度も同じことをいうようですが、対処する立場の人も自分で抱えこんでしまわないように、その人たちが相談にいける精神科専門医の確保、相談室の充実などが欠くことのできないものとなります。

 

参考 自殺と労働災害

これまでに述べてきたことや、「6 精神疾患と労働災害」のところと重複する部分があるかもしれませんが、一応自殺と労働災害の関係ということで簡単にまとめておきます。

一時期、自殺というのは、個人の自己選択の一つであるから、それは災害補償の対象にはなじまないという考え方がありました。特にはっきりした遺書が残っていたりすると、更にそれが自己の決定に基づくものであるからとされたりしました。

 

 

 

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