日本財団 図書館


寿命が延びているだけ、昔いわれたように、この世代では精神分裂病の発症はみられないなどとはいえませんが、これらの精神疾患は、思春期から青年期にかけての発症が多いことは確かですから。

反面、軽症のうつ病が比較的多くなるともいいます。この要因については、いろいろ考えられますが、加齢に伴う心身機能の低下や、職場や家庭における若い時とは違った形での悩みやストレスが関係してくるかと思われます。従来診断でいう内因性うつ病というのはさして多くないと考えられていますが、中年期の後半に退行期うつ病という病態の発症をみることがあります。下に簡単に説明をしておきますが、この年齢での職場のストレスによるものと判断してしまわないで、専門医の治療を受けることが大切になります。

 

[退行期うつ病] 更年期うつ病、初老期うつ病もほぼ同義

一応の目安として、55歳を中心に50歳〜65歳で初発する、うつ病で初老期(更年期)という身体的、社会的な背景の元に発症した内因性うつ病に近いものと考える人が多いようです。加齢や取り巻く状況が発症に大きく関与し、一連の心的ショックが続いたあと発症することが多い。発症前の性格は良心的、几帳面、柔軟性に欠ける等、素因的には他のうつ状態と共通するところはありますが、内分泌機能の変化、身体的老化現象等年齢要因が大きいと考えられます。症状面では不安焦燥が目立ち、妄想的色彩を帯びることも多く、自殺率も他のうつ病に比べて高いともいわれています。

 

個人差はあるでしょうが、残念ながら確かに加齢に伴って、身体的にもですが、精神面での柔軟性―ややあいまいないい方ですが―低下してくるのも事実です。これが家庭内でも職場内でも、特に世代の若い人たちとの間での摩擦となることがあり、それが本人にとってもストレスになるというような状況が考えられます。

このようなことをまとめてミドルエイジの危機というような言葉を使うことがあります。多少大げさないい方かもしれませんが、このようなことを本人もよくわきまえ、また周囲でも十分に理解を示してサポートとしていくことが大切です。

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION