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ここで上司というのは、主に中間管理職の立場の人ということになりますが、健康管理医に「私の部下に少しおかしいのがいるのですが」といって相談に行くのも、なかなかためらわれるものです。また、後で本人から「自分を精神病扱いにした」と恨まれるのではないかといった危惧を持つこともあるでしょう。無理もないことだとは思いますが、結局は本人のためになることと割り切って、このような時はなるべく早く相談にいくことがよいようです。念のため医師は、状況を踏まえて、上司のだれだれがこう言ったからとあからさまに本人に告げることはありません。当然このような場合は、健康管理医だけでは対処できないことが多いので、精神科専門医に相談することになりますが、それから先、専門医の立場でどう対処していくかは、主題から外れますので特にふれません。ただ一つだけ大事なことは、職場としての家族への対応です。職場での状況は家族には分からないわけですし、家庭的でも多少問題な行動があれば別ですが、身内としてはひいき目にみるという面もあるのでしょうが、「うちの…に限ってそんなことは」とか「家では全くおかしなことはありません」という答えが返ってくることが少なくありません。実際に治療の場にのせるためには、家族の協力が絶対に必要ですから、この辺は医師を含めて職場の方でも、家族によく分かってもらうように根気よく説明して納得してもらうように努力するしかないと思います。

最近は、精神科といっても、昔のようにそう特別な目でみることは少なくなってきていますし、精神科医に相談することをそう特別なことと思わない人も多くなってきてはいますが、それでもまだ、精神科受診を勧められると二の足を踏む人も少なくはないようです。

精神科といわないで、神経科といった方がいいか、心療内科ならいいかなどというこそくなことはともかくとして、正直なところ、本人に精神科受診を勧めるには、細やかな心遣いが必要のようです。

上司が本人の様子を見て、また相談を受けて、いつ医師に相談するか、バトンを渡すかということも、考えてみればそう単純なことでもありません。

 

 

 

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