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あくまでも特定の疾病を見つけるということではないので、ここに示したことのいくつかに気付かれれば、だれにでも精神的不調にあることの発見はできるということになります。蛇足になりますが、口数の少なかった人が急におしゃべりになったり、お節介になったとか、その逆であるとか、非常に几帳面だった人が急にだらしなくなってきたなどということでしょう。

もっとより精神疾患的な発見のチェックリストというのもありますが、かえって混乱を招く元にもなりかねないので、あえて示さないことにします。

ここで、もう一つの問題としては、職場内では周囲から「どうもこのごろ様子が…」と気付かれていて、それとなく家族に聞いても、「家では全く変わったことはありません」という返事が返ってくることがよくあります。対応については家族の協力が必要ですが、このところが壁となってしまうことがあります。本当に気が付いていないのか、ある程度は分かっていても、家族としてははっきり認めたくないのか、いろいろな状況が考えられます。

逆にこれは余り多くはありませんが、家族の方から上司などに「うちの誰々はこのごろ仕事をちゃんとやっているでしょうか」などと問い合わせがあり、そういわれてみればなどということもあるかもしれません。実際には、これはまれなのですが、広くは職場の問題と考えられなくはないとしても、より家庭内の問題、例えば、家で怒りっぽいとか、暴力的になるとか、酒を飲んで荒れるとか、夜よく眠れていないようだとか、それが、家庭内でのトラブルや職場と直接関係のないストレスによることもあるでしょうし、職場のストレスが家へ帰ってから表面化することもあり得ますので、やはり職場内では何もないからと無視できないことだと考えます。

よく、どんな病気でも早期発見、早期治療がその病気の予後をよくするといいます。一般的にはそうですし、職場不適応についても、ある程度はそうもいえます。しかし、実際には残念ながら全てがそうだともいえません。

 

 

 

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