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オ 人事異動、配置転換、出向

職場内でストレス要因となり、うつ状態などの発症の要因となることも多いとされるものに、人事異動などの職場の配置換えがあります。事実、人事異動や出向をきっかけにストレス反応やうつ状態を呈するようになった事例もよくききます。仕事の内容、人間関係あるいは、転勤などで住居や職場の雰囲気などが大きく変わるということが精神的な負担につながることはある程度理解はできますが、これも単純なことではなく、内容的に、昇進なのかそうでないのか、仕事の内容ややり方が大きく変わるのか、変わらないのか、同じ施設内での異動なのか、転勤といってもどのくらい遠くになるのか、単身赴任にならざるを得ないのかどうか等様々な事柄が考えられます。ただ、公務員であると民間企業であるにかかわらず、いわゆる勤め人という立場では避けて通れないことも事実です。しかし、職場としても個人の希望や事情のみを優先するというのも現実にはできないことではあります。ただ、現実を踏まえながら前に述べた仕事の向き不向きなども考慮に入れて、それこそカウンセリング・マインド的な配慮が必要だともいえるわけです。

一つ注目しておきたいのは、この問題は比較的日本で大きいようだということがあります。世界中のどこの国でもというのはわかりませんが、アメリカやヨーロッパなどではそれほどストレス要因として考慮されていないようにも思われます。ホルムスの指標の中にもこれと同じ項目はありません。

日本では、学会などでも「人事異動や出向に伴う、うつ状態について」というシンポジウムが持たれたことがあります。詳細はともかくとして、そこで問題になったのは日本国民の集団帰属性ということであったようです。このことを私なりに考えてみますと、日本は島国であり、そこで培われた仲間意識の強い国民性といえるのではないかと思います。それが良い悪いではなく、仲間意識が強ければ強いほど、そこから抜け出す、ほかの仲間の中へ入るということに抵抗を感じるのかもしれません。

 

 

 

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