日本財団 図書館


そこで、Tさんが「こんなに短い時間、話をするだけで、評価が決まるのですか?」と聞いたら、「面接するのは大変なんだよ」という返事が返ってきただけだったといいます。Tさんの質問の根っこにある不安や不満に応えるような返事はありませんでした。Tさんが期待していたのは、「会社はこういう方向にあるから、君には来期はこういう目標でやってほしい。その結果の評価はこうなる。また、今期の評価についても疑問があれば何でもこの場で聞いてほしい。時間は限られるが納得できるまで話し合いたい」といった上司の真摯な対応でした。そして、面接だけではどうしても時間が不足するわけですから、「日ごろからの接触をもっと密にするようにしたいと思っている」といったことを上司から言ってほしかったのです。部下からの質問にはその根っこにある感情を把握してそれに応えることが大事になります。

Tさんは、その面接で迷った揚げ句、直属の上司である室長についての悩みも打ち明けました。ところが、上司から「どっちもどっちじゃないのか。君はもっと上司に対して寛容にならなければ駄目だ!」としかられてしまったといいます。さらに、この話は室長にも伝わるところとなって、Tさんは強く責められるはめになり、上司との面接で下から積極的に話したことが散散な結果になったといいます。

 

「上司の査定に嫌気がさし優秀な若手が退職した」

若くして抜擢された室長は、常に自分の考えている方向にみんなを力でねじ伏せようとするタイプでした。2歳しか離れていないTさんでもみんなの前で平気で罵倒するし、部下には二言目には「査定を下げるぞ」「不満がある者はどこにでもとばしてやる」と言います。そうした中、嫌気がさした若手の部下が二人続けて会社を辞めるという事態になりました。優秀な若手が辞めたことで、自分の管理能力が問われることを気にした室長は、Tさんに「何でお前がもっと引き止めなかったのだ!」と当たり散らしたといいます。Tさんが、医務室を訪ねたのはこのころでした。

その後、若手の部下が会社を辞める前に一連の経緯を人事部に直訴したことから、とりあえず室長は「設計の仕事に専念するため」という理由でいったんは室長を降りることになりました。

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION