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人間は、自分の利益になることだけをしているのでは、決して人間としての完成には至りません。私を初めとして、多くの人々は利己主義で惰性的な生活をしておりますが、改めて深い感動と共に、こうした方々の勇気ある行動をせめて今後、私自身の一つの目標とさせていただきたいと希っています。

他人の非を暴くことをもって正義の証とする風潮が突出している日本にあって、この日本財団賞は、信念、忍耐、誠実、極めて日常的な穏やかな優しさ、などを真実の人道とし、それを貫かれた方たちに対して尊敬と称賛を贈らせて頂くことを果たして参りたいと思います。私共日本財団、並びに日本顕彰会が、その責務を果たして参れますよう、どうぞ今後とも各方面のお力添えをいただきたいと改めてお願いする次第でございます。

実は昨年も申し上げたことなのですが、副賞の百万円については、長年、人のためにお尽くしくださった皆さま方のことですから、このお金も有意義に、他人のために使おうなどとお思いかもしれません。しかしどうぞそんなに堅くお考えにならず、長年のお働きに対して、気楽にお使いになっていただきたいと願っております。

百万円ありますと、お子さまとごいっしょのハワイ旅行、お宅のお風呂場やお台所が古くなっておられましたら最低限の修理、かなり状態のいい軽自動車の中古車の購入くらいでしたら可能でございます。父上を失われたお子さま方が将来上級学校へ進まれる時には、父上が密かに残された親心として入学金の一部にでもして頂けましたらどんなに嬉しいでしよう。

人間の幸せは、死ぬ日まで無理なく働き続けることにありますでしよう。皆さま方の今日あるのも、助けるべき方々がいてくださったおかげです。共にお互いの存在を感謝して、この世を過ごしてまいりたいと存じます。

今後もお元気でご活躍ください。ありがとうございました。

 

2000年11月22日

日本財団会長 曽野綾子

 

 

 

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