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「オルフェウス」をつくるにあたって

 

◎ギリシャ神話を題材にした『黒いオルフェ』という映画がありました。熱狂的なリオのカーニバルを舞台に繰り広げられる若い男女の恋物語、その二人に影のようにつきまとう死神を登場させることによって、この世に生きている歓びを強調するという見事な演出がなされていました。ジャン・コクトーも『オルフェの遺言』を含む映画三部作をつくり、更に戯曲も書いています。また日本で初めてつくられたオペラは、何と『オルフェ』でした。

デフ・パペットシアター・ひとみの第一作も『オルフェ』でした。この作品は55分間全く音のない世界、観客席で聞こえるのは衣裳の衣擦れの音、人形を操作する人の足音のみ―それは当時の人形劇界において衝撃的なデビュー作でした。その作品は1983年秋、チェコスロバキア(当時)で行われた第8回デフ・パントマイム・フェスティバルで審査員賞を受賞しました。

さて、20年ぶりにデフ・パペットが総力をあげて取り組む『オルフェウス』は…

舞台は―今。世の中の全てが嫌になり、ひたすら自転車に乗って逃げる15歳の少年。うしろを振り返ってはいけないのだ。目的もなく、ただひたすらに国道を北に向かって走る。そこに突然、奇妙な美術館が現れる。道化の手招きで、引き寄せられるようにその中に入ってしまう少年。館内には奇妙なオブジェや絵、その中に一枚のオルフェウスの絵。食い入るようにその絵を兄つめる少年。― こんな場面からこの人形劇は始まります。俳優たちが瑞々しいイマジネーションで現代とギリシャ神話を繋ぐ旅に皆さんをご案内致します。

◎神話―どこの国も民族も神話という人間を写し出す「鏡」の物語をもっています。人間は永い間、ストーリーを、話され、語られるものとして所有していました。神話が語るものはもちろん、かつて存在したことであり、過ぎ去ったことです。けれども過去は今に尾を引いている以上、それはこれから起こることやなされることについても語っています。語られているその中に、自分自身を見ることもできます。人間が笑ったり泣いたりする、全てのことがあらかじめ用意されているようです。神話は決して古めかしい物語ではありませんし、そしてどんな時代にも共通する普遍的な物語です。

デフ・パペット結成20周年記念作品『オルフェウス』は、等身大の人形、仮面をつけた俳優たちの肉体、全神経を行き届かせた表現で、どこまで語ることができるのか―

音楽は全て生演奏、一部手話、スライドの文字表現もあります。

 

 

 

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