欧州視察報告
ドイツの民間団体「白い環」は、口頭調査だけで一時金を支給
運営委員
酒井宏幸
今回は関弁連シンポジウム(十二年九月二十二日千葉県開催)の調査のための視察である。
支援の先進国である、ドイツとイギリスを視察。ドイツでは民間団体の「白い環」の様子を見たいし、イギリスでは、できれば支援の現場であるローカルヴィクティムサポートやウィットネスサービスの活動も見たいと思い、専門委員である山岸先生とともに参加した。
五月十八日(木)ドイツ
AM 九時 連邦刑事局(ビースバーデン)
ホテルを八時に出発し、タクシー二台で現地へ向かった。
厳重な警備の場所だと聞いていただけにかなり緊張したが、対応はすばらしく良かった。
ドイツでの予定を全て手配してくれてあり、昼食を担当者といただき、車でマインツの「白い環」まで送ってくれた。ここでは、主にドイツにおける法制度としての支援を視察した。
PM 二時 「白い環」(マインツ)
いろいろな話を聞いたが、メインは臨時の金銭補助という感じがした。臨時にボランティアによる口頭調査だけで、一時金を支給してくれるのである。その後、継続的に金銭支援が必要な場合には、三名の理事により判断され、必要なだけ支援を行うと言うことである。書面は一切必要なく、必要に応じて対応している。
不正利用について訪ねると、「騙されるのは白い環だからよい。多くの被害者を支援することに比べれば騙されることなど何でもない」と言うことだった。その姿勢の違いに驚かされた。
五月十九日(金)ドイツ
AM 十時 犯罪中央局
場所はビースバーデンであったので、タクシーで向かった。
担当者は弁護士と言うことで、刑事制度の話が中心であった。逆に日本の制度をかなり聞かれた。
PM 一時三十分 OPFER-HAIFE(国庫補助の精神ケアグループ)
(理事の裁判官・弁護士並びにケア担当の臨床心理士の話)
連邦刑事局のクーべさんの奥さんで、裁判官の方と弁護士が理事をボランティアで務めている国営とも言える団体であった。おもに精神面の補助をしているとのことであった。ケア担当はプロであるとのことであった。二名の支援者により支援活動を行っており、一人当たり二百名を担当していた。当然関係するプロの支援者もスーパーバイズを受けているとのことである。
五月二十二日(月)ロンドン
AM 十時 サウスワークランコート(渡辺理代さんからの紹介で伺ったところである。彼女がロンドンにいたとき働いていた場所である。)
地方WSの視察(裁判の見学を含む)直前に連絡したにもかかわらず、見事な対応であった。刑事裁判を傍聴席で十五分ほど見て帰る(カメラは一切持ち込み禁止であった)裁判所内に証人用の控え室が二部屋あり、そこで説明を聞いたり時間をつぶしたりしていた。子供用のおもちゃやビデオも備えてあった。
五月二十三日(火)ロンドン
AM、VS本部(全体の説明、理事会との食事)
年間予算が二千五百万ポンド(四十二億)にのぼり、広く活動している。政府による補助が二千万ポンドになるにもかかわらず、特別な口出しがないことである。
PM、SAMM(殺人被害者遺族の会である)
財政的には貧しいが、各支部とも会員の自宅を用いて支援活動を行っている。警察との連携も十分だということであった。
五月二十四(水)ロンドン
AM 地方VS
地域の特性に即した活動をおこなっており、毎朝警察から被害者リストが送られてくる。リストに基づき、手紙を出すとのことであった。
PM WS(裁判所における被害者担当警察官・刑事弁護人との懇談を含む)
WS自体が裁判所等にとって必要不可欠だという印象であった。
五月二十五日(木)ロンドン
警察署(施設の見学と児童虐待・ドメスティックバイオレンス・殺人遺族担当関係の話を受ける)
警察では、各犯罪被害者ごとに専門担当者を配置し、対応していることが解った。
視察は以上だったが、詳しい報告については、関弁連シンポの報告書にあります。