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『海と遊ぶ』とき想うこと

気象解説家

島川甲子三

 

☆なぜ環境を優先すべきか

 

名古屋港の藤前干潟埋め立て計画や、愛知万博の「海上の森」での開催計画では、自然環境破壊になると、地元からも国際的にも指摘され、それらの計画は急いで修正されました。このような錯誤の例は日本に限らず沢山あるようです。そして今も、これからも又ぞろ出てきそうです。これらは現在の自然環境が、数十年まえに比べて、重大な変化をしていることへの認識が極めて乏しいか、利己経済的理由に囚われているためです。

我国が終戦を経て、経済復興にさしかかった頃、「日本列島改造論」と云う言葉が流行りました。その頃、或る人達が『我国には道路予定地はあっても道路は無い』といって、あらゆる道路の舗装に努力しました。また同時に都市近郊の雑木林や里山は宅地化され、小川や溜池は埋められるかコンクリートの護岸で固められました。そして鉄条網やフェンスで仕切られて『よい子はここで遊ばない・PTA』『危険に付き立ち入り禁止・警察署』等々の立札が並びました。また激しい台風や大雨などがあると、防災という名目でコンクリートとブルトーザーで、長大な海岸堤防や護岸工事を次々と完成させました。こうしていつの間にか、人々は身近な自然から引き離されてゆきました。やがて快適で便利で使い捨て放題の生活習慣が、当たり前のように定着するにつれ、基本的なものの考え方を見失ったような計画が、平気で立案されてしまうようになったのはまことに残念です。でも多くの人々は、快適・便利・使い捨てと引き換えに、公害・汚染・地球温暖化・難病の増加・心の砂漠化などに気付きました。当然様々な対策が立てられ、それらの幾つかは軽減の方向に進んでいます。しかし不安要素としての環境の悪化は、それらの調べが進むにつれ、ますます深刻化しています。したがって新しい時代に則した地球環境を、正しく認識するための理解が必要になります。そこで今回は、地球環境の中で特に、動植物が海から与えられてきた様々な環境の仕組みや恩恵の現状と、今後どうしたら海の環境を長く保てるか、その基本的なルールの一端を述べて、海と遊ぶ皆様のマナー高揚の参考にして戴ければ幸いだと思います。

 

☆地球に海が誕生

 

宇宙銀河界で太陽系に属する地球は、まことに変わった幸運な惑星です。太陽から約一億五千万km離れて略円軌道で太陽を巡る地球は、ほかの兄弟星(月・火星・金星・水星・木星・土星・天王星・海王星・冥王星など)に比べても、際立った違いがあります。その第一は地球に海が在ることです。

 

 

 

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