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4.4 藻場成立可能性海域のマップ化、成立阻害要因の検討

1) 藻場分布現況の再現

前章で整理した海藻・草類の生育条件から、藻場形成可能海域を推定し、現状の藻場分布状況とを対比して、推定結果の妥当性を検討した。

(1) アマモ場

表4.2.1に示したアマモの生育条件から判断すると、水温に関しては、比較的広い範囲にわたって耐性を示すが、夏季の高水温期には凋落する事例がみられることから、夏季の高水温の影響を強き受けていると考えられる。夏季の水温としては28℃以下が適正とされている。

塩分については、もかなり広い範囲で耐性を示すが、生長に適した下限は27psuとされている。

光量については、生育のみられる場所の年平均が35μE/m2/sとされている。

また、砂面変動や流速の大きい場所では、砂の激しい動きによって残存率が低下するとされており、苗の耐流速でみると6cm/s以下であれば生育が可能とされている。

以上のことから、生育環境条件として、以下の条件を満足する海域を求めた。

・水温;海底直上層の夏季水温が28℃以下

・塩分;海底直上層の年間の塩分が17psu以上

・光量;海底直上層の年間の光量が、35μE/m2/s以上

・流速;海底直上層の年間の流速が、6cm/s以下

 

これらの条件を満たす海域は、図4.4.1に示すように、市川・船橋地先、木更津地先、富津岬から以南の沿岸域、並びに横須賀市沿岸にみられる。いずれも浅海域であり、塩分に対する耐性が大きいことから、光条件の寄与が大きいと考えられる。

図4.1.1(1)に示した実際のアマモ場の分布と比較すると、木更津地先、富津岬の北側については、推定結果と同様であるが、市川・船橋地先、富津岬以南、横須賀市沿岸では実際にはアマモ場はほとんどなく、推定結果と異なっていた。

市川・船橋地先の場合、いわゆる三番瀬が分布しており、以前はアマモが形成されていたとされている。しかし、近年は、アマモとは競合関係にあるアオサ類の集積がみられ、底質も泥質化しているといわれている。また、今回は平均的な海況下でシミュレーションを実施したが、出水時には塩分低下が大きい海域である。このように出水時の塩分低下、競合生物の関係で実際にはアマモ場が存在していないものと考えられる。

また、富津岬以南、横須賀市沿岸の場合、今回の検討では考慮していない波浪の影響が大きいものと考えられる。アマモは海底に根をはって生育するため、波による砂面変動が大きい場所では定位することができないものと考えられる。富津岬以南、横須賀市沿岸は、湾口からの波の影響(主に夏季の南からの波の影響)が大きいものと考えられ、波による砂の移動が大きいため、実際にアマモ場が存在していないものと考えられる。

 

 

 

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