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2. これからの国際協力

上記の実績で分かるように、これまでの当庁の国際協力は主にインドネシア、マレイシア、シンガポールのマラッカ・シンガポール海峡沿岸国及びフィリピンに関連したものが多かった。これは、日本の隣国である東南アジアに属し、また、海上交通が盛んなためである。しかしながら、シンガポールはすでに開発途上国を卒業し、また、マレイシアも急速に発展しており、今後、両国への案件は減っていくものと思われる。

これに代わり、タイ、ヴィエトナムの案件が増えていくものと思われる。ヴィエトナムについては、今年度、当庁から長期の専門家を派遣する予定となっている。地域的には、引き続き東南アジア地域が主になっていくものと思われるが、昨年度からモーリシャスに長期専門家が派遣されており、また、近年、大洋州、中南米関連の案件が増えてきていることから、当庁の国際協力の活躍の場も広がっていくものと思われる。

このような地理的変化もさることながら、質的変化についても注目していかなければならない。

これまで当庁の国際協力は、主として開発途上国からの要請に基づき、相手国の海上保安体制の発展に寄与することを目的として行われてきた。しかしながら、海上保安庁の業務は、当庁の国際協力が始まった1970年代と比較し大きく国際化している。一特に近年は、不法入国、銃器・薬物の密輸が増えており、また、東南アジアにおける在外邦人の保護活動、海賊事件のように、従来想定し得なかった業務も起きている。このような海上保安業務の変化を受けて、これからの当庁の国際協力も変化していく必要がある。

平成11年8月10日に発表された政府のODA中期政策は、ODAの意義の一つとして「世界の平和と安定に依拠し、資源・エネルギー、食料等の供給を海外に依存する我が国にとり、開発途上国支援に引き続き積極的に貢献を行っていくことは、我が国自身の安全と繁栄の確保にとって重要な意義を有し、平和の維持を含む広い意味での我が国の国益の増進に資する。」ことを上げている。事実、これまでの当庁の国際協力には、日本の生命線とも言えるマラッカ・シンガポール海峡に関する案件が多く、水路測量や航路標識の保守運用等で多くの技術協力を行っており、同海峡を航行する日本関係船舶にも多くの裨益効果をもたらしている。

 

 

 

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