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これらの国の海を安全できれいなところとすれば、その国の経済は大きく活性化しこれを通じ日本にも多くの利益があることから、海上保安分野の技術協力は非常に有効である。

・海の治安を確保し日本の国民生活を守る。

近年、日本の国民生活を脅かしている銃器、薬物、不法移民の多くは東アジアから海を通じて日本に持ち込まれており、また、東南アジアの海賊では日本人船員や積荷等が襲われている。海上保安庁の技術協力を通じこれらの海域における治安を向上させることは、日本の国民生活を守るためにも非常に有用である。

 

このように海上保安庁の国際協力は、開発途上国のみならず我が国にとっても利益効果の大きいものであり、今後、重点的に取り組んでいかなければならないことである。このことからも、従来は、庁法の所掌事務に「国際協力」という文言が書かれていなかったため、運輸省の所掌事務であるという理屈により、国際協力を実施していたが、国土交通省設置を機に庁法も改正され、所掌事務として、第五条二十四「所掌事務に係る国際協力に関すること」が明確に書き加えられることとなった。

海上保安庁がODAの資金を用いて行う国際協力は、(5)1]の2国間贈与の技術協力と国際緊急援助隊の派遣によるものが大部分である。いずれもほとんどJICAが担当しており、海上保安庁は、運輸省に割り当てられたODA予算によって実施するものを除き、JICAに協力するという形で国際協力に関わる。

技術協力については、技術協力専門家(以下「専門家」)派遣と技術研修員(以下「研修員」)の受入の二つに分けることができる。

専門家の派遣は開発途上国から要請された各種分野において相手国の実情に適した技術や知識を伝授することにより、当該国の人造り、制度作り、国作りに貢献する技術協力の最も基本的且つ重要な形態である。派遣方式により、個別専門家とプロジェクト専門家(専門家派遣、研修員受入れ、機材供与をパッケージ化し、計画の立案から、実施、評価までを行う協力形態をプロジェクト方式技術協力といい、その専門家のことを指す。なお、プロジェクト方式技術協力を海上保安庁が行った実績はない。)に、派遣期間(1年以上かどうか)により長期専門家と短期専門家に分類される。

 

 

 

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