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VI. 医療業務について

 

当施設利用児童に対して、精神科担当医としての対応の流れをご紹介します。

まず、入所、通所どちらの子供さんにしても、利用開始なるべく早く初回面接を行い、見立て、診断をするとともに、当施設利用の目的をできるだけ本人から聞くようにしています。何事も、最初が肝心といわれますが、ここでは特に自主性を重んじる基本姿勢があるので、本人の口から聞くということを大切にしています。自分でまだ考えられない相手には、これから一緒に考えていこう、という方向になります。

初回面接が終われば、心理・生活各担当スタッフと話し合い、治療的対応への毎日の組み立ての方針を決めます。また、不眠、不安、緊張、気分の落ち込み等の何らかの精神科的症状が強いようであれば、必要に応じて薬の処方を考えます。薬に対する説明や飲み方は本人と保護者両方にします。できるだけ本人の希望にそった処方を考えますが、薬に対して拒否感があったり、逆に依存的であったりする場合はかなりの説得が必要な場合もあります。

その後は、特に問題がない場合は、月に1・2回程度の個人面接を定期的に行っていきます。日常的には、子供たちは担当スタッフとの関わりが中心になるので、私は随時スタッフからの相談を受けてアドバイスを出したり、みんなで知恵を寄せ集めて対応していっています。問題が込み入ってきた場合はケース検討会になります。

家族への対応としては、基本的には月1回程度の家族療法・家族面接を行っています。家族、特に親御さんの心痛・悩みはやはり大変なものがあり、それらを受けながらこれからのことを一緒に考え、協力体制でしていきましょうとお願いするわけですが、ほとんどのご家族は非常に協力的にしてくださっています。家庭そのものの問題が主で入所にいたっている子供さんの場合は、児童相談所の担当の方達と連携をとりながら、慎重に家庭への対応をしていっています。

また福祉サービスとして、当施設利用者以外の方達に対しても、電話・外来相談をお受けしています。個人的に来られる場合もありますが、学校や保健所、病院などから紹介されて来られる場合が多いようです。ときには継続でのカウンセリングとなることもあります。

以上がおおまかな業務内容です。ここでは、教育・相談・医療機関等との協力が不可欠ですので、こまめに連絡をとりあえるよう心がけています。自分として理想とするところは、もし我が子に問題がおきたときには気軽に利用したいと思える施設、というものです。そのためにどうずれば良いかという点を基本においています。安全が保証されたうえで、こども達にできるだけ多くの選択肢を提供し、できるだけ本人の意志を尊重できるよう、またその意志が本人に有意義なものになるようにスタッフが支えになれる施設をめざしてゆきたいと思っています。

 

 

 

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