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国際会議報告

 

国際試験水槽会議氷専門委員会出席報告

 

正員 山口一*

 

国際試験水槽会議 (ITTC, International Towing Tank Conference) の氷専門委員会 (specialist Committee on Ice) が、平成12年9月16日(土)に、フィンランドのヘルシンキにあるKvaerner Masa-Yardsの北極技術研究所(通称MARC, Masa-Yards Arctic Research Centre) で行われた。国際試験水槽会議は世界の試験水槽保有機関により構成される国際会議で、3年を一期として、3年に一回の総会が開かれる。前回の総会は、日本造船学会誌にも紹介されたとおり、平成11年9月にソウルと上海であり、その後、第23期に入っている。3年毎の総会の間は、各種委員会での活動が主体となり、専門委員会では、その時に重要な技術課題について、短期集中型に調査する。氷専門委員会は、氷海試験水槽の試験技術及び一般の氷海技術についての研究動向調査と、今後の方向についての推奨を行うのが課題である。今般ヘルシンキで行われたのは、今期、すなわち第23期国際試験水槽会議氷専門委員会の第2回会合であった。

国際試験水槽会議の専門委員会は、通常7、8名の委員で構成されるが、今期の氷専門委員会は4名の少数精鋭である。写真1に、メンバーの写真を示す。委員構成は、日本から2名(内1名は委員長)、力ナダから1名(幹事)、フィンランドから1名である。ロシア、ドイツからの参加がないのが残念である。この委員会は、平成12年5月に米国テキサス州ヒューストンにて第1回会合を開き、そこで委員会の具体的課題を決めた。今回の会合ではその進捗状況と、今後の方針が議論された。その内容は、下記のとおりである。

・氷海水槽試験についての文献調査と文献リストの更新

・ITTC Procedure―氷中模型試験についての一般的記述―の改訂

・ITTC Procedure―平坦氷中抵抗試験―の改訂

・ITTC Procedure―模型氷質試験―の改訂

・船舶と氷山の衝突問題についてのまとめ

・不確実性解析の手法についての調査

・ロシア、ドイツ等、本委員会外の国際試験水槽会議メンバーとの連絡

委員会作業は概ね順調に進んでいるが、それでも朝9時から夕方までの長時間の議論が必要であった。写真2は、今回の会合をお世話くださったGoran Wilkman委員である。

MARCは造船所であるKvaener Masa-Yards所属の研究所であり、砕氷船などの開発研究が仕事である。

Kvaener Masa-Yardsは、かつてのWaltesila造船所で、客船と砕氷船の建造に古い歴史がある。現在も、受注が満杯のようで、会議の翌日に、ヘルシンキ中央部から徒歩で行ける造船所を見てきたが、大型クルーズ客船を建造中であった。

 

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写真1 第23期国際試験水槽会議氷専門委員会メンバー:左より、山口(東京大学、委員長)、Ahmed Derradji氏 (IMD、カナダ、幹事)、Goran Wilkman氏 (MARC、フィンランド)、泉山耕氏(船舶技術研究所)

 

*東京大学大学院工学系研究科

 

 

 

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