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国際会議報告

 

国際試験水槽会議理事会・評議会出席報告

 

正員 加藤洋治*

 

1 そもそもの来歴

第22期国際試験水槽会議の本会議が昨年9月にソウル・上海で開催されてから、ほぼ1年経ち、今年の9月にフランスのバル・デ・ロイの町で、国際試験水槽会議(以下ITTCと呼ぶ)の理事会と評議会が開催された。バル・デ・ロイの町と言っても「どこにあるの?」と知らない人がほとんどであろう。パリから北西に100km。西洋史に詳しい人なら、ジャンヌ・ダルクが火炙りになったルーアンの町の近く、第2次世界大戦に興味を持つ人なら、ノルマンディー上陸作戦のあった海岸にほど近いところと言えば、その場所が地図の上に浮かんで来よう。

フランスの海軍の水槽はパリにあり、俗にパリ水槽と呼ばれていた。このパリ水槽がパル・デ・ロイの町に移ることになり、10年ほど前に、まず最新式のキャビテーション・タンネルが建設された。その後次第に施設が建設され、このほど中心施設である曳航水槽(長さ:545m、長さからB600水槽と名付けられている)が建設されたので、そのお披露目を兼ねて第23回海事流体力学シンポジウムが開催され、またそれに便乗する形でITTCの理事会と評議会が開催された訳である。

 

2 ITTC評議会

ITTCは世界の船舶流体力学関係の研究機関が会員となっている組織であるが、その主目的はあくまでも「精度の高い実船性能推定」である。そしてこの目的を果たしている機関が評議会メンバーに加わることができる。ITTCの基本政策はここで実質上決められる。

今回の会議では、いつものように各技術委員会の中間報告を元にその活動状況を審議したが、さらに評議会メンバーの代表者3人が各技術委員会の委員長と密接にコンタクトし、23期の技術委員会の活動につき助言を与え、また24期の技術委員会の活動方針(タスク)や、今後の活動について討論することにした。これはITTCの将来の方向をも議論することになろう。代表者3人としてアメリカ地域からMorgan氏、ヨーロッパ地域からドイツのJensen氏、アジア地域から三菱の土岐さんが選ばれた。

今回の会議ではまた、「ITTC加入申請書」、「技術委員会委員候補者の履歴書」、「技術委員会委員長による技術委員会委員の評価報告書」などの書式(フォーマット)が決められた。これらは、従来は書式がなく手紙の形で行われていたので、精粗ばらばらで「履歴書」などは1枚のものから3-40枚のものまで有り、フォーマットを決める必要性が強かったものである。

今回討議されたもう1つの大きな問題は、「年会費制を導入するか」という議論である。現在、ITTCでは年会費等はなく、3年に1回の本会議の参加費でその必要経費をまかなっている。本会議にまったく出席しない機関があること、ニュースレターを年2回発行するなど通常の経費もかかることなどから、このような議論が始まったものであるが、重大な問題なので慎重に議論することになった。

明るい軽い話題として、ITTCのロゴマークが決まったことがある。これまではそれぞれの期ごとのロゴマークはあったが、恒常的なITTCのロゴマークは無かった。セクレタリーから3つの案が示され、図に示すものが選ばれた。印刷では黒になっているがバックの薄い色の部分は空色である。これをさらにデザイナーが改良し最終的に決める。また各期ごとのロゴマークを作ることはそのまま存続される。

 

*東洋大学工学部

 

 

 

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