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2-8 NMR(核磁気共鳴法)による深層水の物理学的性状の把握

 

1. 実験目的

深層水の物理学的な性状についてはほとんど知られていない。今回、深層水を構成する水分子の構造解析と水分子間の化学結合の性状を検討するために、NMR核磁気共鳴法による深層水中の水分子の分子クラスターを測定した。

 

2. NMR核磁気共鳴法

近年、水の状態分析法の一つとして17O-NMR法が注目されている。この方法は、水分子中の酸素同位体である17O(天然の水の0.037%を構成する)の核磁気モーメントを利用した核磁気共鳴法であり、117O原子のような磁気モーメントを持った原子核を強い磁界に入れるとエネルギー状態が高いレベルと低いレベルに分離する。この状態で外部磁界と直交する方向からラジオ波レベルの電磁波を照射すると、核スピンがエネルギーを吸収してエネルギーの高い状態に遷移する。この高い状態の核スピンはエネルギーを失ってもとの低いエネルギー状態に戻る。この時の高いエネルギー状態から低いエネルギー状態に戻るまでの時間が「緩和時間」である。(正確にはスピン格子緩和時間とスピン-スピン緩和時間がある。)この核スピンのエネルギー状態の「緩和時間」を測定し、水の中で対象としている原子核が置かれた環境に関しての微視的情報を得るものである。つまり、この「緩和時間」からその液体の粘性率がわかれば液体の分子の大きさが計算できる。

 

3. 測定方法

測定装置:日本電子製JNM-GSX400 FT-NMR(核磁気共鳴分析装置)

 

表2-39 FT-NMRによる測定条件

132-1.gif

測定試料:

海ヤカラ1号により取水された深度1400mの深層水(試料番号DW-1127)

海ヤカラ1号周辺の表層水(試料番号SW-1127)

 

 

 

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